マーケティングに基づく価格戦略

価格の決定は、マーケティングにおける重要な戦略です。高い価格で統一すればハイブランドとして認知されますし、逆にエブリデーロープライスのような戦略をとると幅広い世代の人に浸透します。
価格の決定は重要な戦略であり、適当に決定できるものではありません。
街で良く見る価格の戦略
人気ラーメン店の住民浸透型の価格設定
田舎のラーメン屋は、地元の人にどれだけの頻度を利用してもらえるかが鍵になります。
そのため、贅沢品である価格設定は、再利用を妨げ、結果的に業績不振を招いてしまいます。もし、品質にこだわりたい、絶対このくらいの原価の商品を提供したいと思っているのであれば、マーケティングも相当量頑張る必要性があります。
人気ラーメン店でよく見るのは、定番のラーメンの価格をサラリーマンでも手軽に食べることができる価格帯に設定していることです。例えば、埼玉県内であると、700円以内で提供しているところも多いです。そして、ニーズに応じて、チャーシューなどのトッピングをつけたり、ミニ丼を頼んだりします。
マクドナルドのお得に魅せる方法
マクドナルドは昔ほど過激な値下げや訴求はしなくなりましたが、ポテトやシェイク、セット商品におとり価格に近い価格設定を行なうことによって、お手頃なイメージを作り集客を行なっています。しかし、実は人気商品はランチの価格帯で見るとそこまで安いわけではなく、行ってしまうと人気商品の方を選んでしまうということがよくあります。
ちなみに、この方法は、メニューを常に更新する必要がありますので、電子化していない店舗では、広告費以外にもコストがかかります。市場におけるリーダーのブランドがなければ消耗する可能性の方が高いので、チャレンジャー以下のポジションの店舗はこの方法を模倣するのはリスクがあります。そのため、おすすめはしません。
家電量販店の地域1番宣言
家電量販店で家電を探す時に、顧客の心理としては、より良いものをより安く手に入れたいという心理が働きます。そこで、家電量販店では、地域一番宣言を行い、他所の店舗で1円でも安かった場合、値下げする仕組みを採用しております。
しかし、家電を購入する選択肢も増加してきました。
最近は、Amazonや工場出荷のシェアも相当数増えており、これには原価の面で、量販店では太刀打ちができないのが現状です。
目的に応じた価格設定方法
マーケティングコンサルティングの業界も熾烈な価格決定によるシェア獲得競争が行われています。しかし、それらも戦略の内になります。
市場浸透価格設定の方が大きく儲けることができ、上澄み吸収価格設定の方はリスクも小さく手堅く利益を上げることができます。
市場浸透価格設定
特定の商圏でシェアを思い切って獲得する場合に実施する価格設定です。この方法は、思い切った値付けを行なうことで、一気にシェアを獲得する方法です。
利益を出す方法としては、販売力が高まった後に収益化します。
最近の分かりやすい例で言えば、IT企業がベンチャーキャピタルに出資してもらい、最初の数年間は赤字であっても、ユーザー登録を重視し、後にそのネットワークを使って収益化していることが多いです。
コンサルティングの場合、対面やプロデュースではなく、お金と時間をかけないオンラインサロンで登録数を高めてから、その会員向けに自社の対面、プロデュース、他社とのコラボ商品の販売を行なっているところが多いです。
上澄み吸収価格設定
市場浸透価格設定とは逆の方法です。最初から利益獲得を目的にした価格設定を行い、競合が増加した場合適正価格にします。
潤沢な資金の供給源がない場合は、上澄み吸収価格設定でなければなりません。市場浸透価格設定は、シェアをとることがありきの方法であるため、初期投資の金額で勝敗が決まると行っても過言ではないからです。
市場浸透価格設定は知名度を獲得することができます。その後の事業展開の武器になることでしょうが、上澄み吸収価格設定はそれを期待することができません。
単なる値下げは逆効果にしかならない理由とは?
「値下げをするな!」と大半のマーケティングコンサルタントは口にします。デフレが続く環境でこそ、値下げは禁物です。
客層が変わる。
このサイトでよく出てくる表現である客質の悪化です。値下げで集客ができた経験を持つと、値下げが常態化してきます。
値下げで集客ができる客層は、通常価格よりも当然世帯年収が低い層であり、顧客の性質も全く違うことも多いです。
店内の様子も変化し、従来の優良顧客も顧客離反を起こします。結果的に、売上高が増えても、利益額が減少することに繋がります。
そして、客層が入れ替わった結果、再び値上げをした場合、たくさんの顧客離反が発生します。そのことを経験してしまうと、例え、儲けが少ないビジネスモデルになっていたとしても値上げができない体質になります。
口コミの評価が悪化する。
例えば、高いブランド力を持った企業が値下げすると、そのブランド力のサービスを期待する顧客が増加します。
値下げをするということは、原価に当たる費用を下げなければ利益を獲得することができません。
結果的に、期待値が体験価値と同等か上回ってしまい、「思ったよりも普通でした。」などの3の評価を増やすことになります。
ほとんどの高いブランド力を持った企業は、評価が4以上であるため、大きく口コミを悪化させることになります。
ポイント
例えば、ディナーが高級路線であり、ランチはお手頃な価格帯に統一すると、ランチで口コミ数を稼げるメリットがある反面、ディナーのイメージを口コミで伝えることができなかったり、高級店である訴求ができないなどのデメリットもあります。
心理的価格設定
消費者行動は心理によるところが非常に大きいため、購入を後押しする価格設定にすることも手の内の一つになります。
端数価格
1万円の商品を9,800円で販売するものが端数価格です。
消費税でも同じことが言えるのですが、キリの良い数字を計算できてしまうと複数商品を購入している場合、買い渋りが発生することがあります。端数価格は、より安いイメージを与えるのと同時に、衝動買いを起こしたい時に実施する価格設定です。
名声価格
高いものほど品質が良いと一般的に考えられています。価格ラインを一定以上に揃えることで高級なイメージ作りにも貢献します。
均一価格
100円ショップは、全て100円だからどれも安いイメージが基盤になっています。利益を出す方法としては、まばらな原価率の商品を用意し、衝動買いで利益を出します。
慣習価格
多くの人の中では、特定の商品の価格が決定づけられています。例えば、ガムの場合は、110円などで、それ以上の場合は高く、以下の場合はお得だと感じます。
段階価格
松竹梅の仕組みの価格設定です。廉価版の梅の価格設定、標準版の竹の価格設定、上位版の松の価格設定を行うと、3:5:2の割合で、竹の価格設定の商品が売れると言われています。
差別価格
例えば、コンサートでS席を購入すると贅沢に感じたり、シーズンオフの格安チケットを購入するとお得だと感じます。
まとめ
消費増税の前ですので、値上げの対策はできているでしょうか?
消費増税により強制的に社会全体が緊縮になるため、値下げをしたくなります。
マーケティングにおいて価格決定は、品質の認知と客層選択を決定する要因です。
簡単に決めずに、今後の展開を考慮して価格の決定を行いましょう。