ステマとは何か?違反(疑惑)事例などをまとめて紹介
現在のウェブで評価を検索することができる状況では、以下のように商品やサービスが過剰に優良に評価されていることがあります。
「検索して評価の高いお店を選んだけれど、なぜその評価になったのかわからない」
「専門家の記事を参考にしてサービスを選んだけれど、どうも書いてあるほどのものではない」
過剰に商品やサービスが優良なものとして紹介されているケースが、SNS、ブログ、メディア、口コミサイトなどで確認されます。これらは、実は金銭的なやりとりが存在する広告であり、これらが消費者の視点であることを装ったステルスマーケティングです。
ステマとは?
ステマとはステルスマーケティングの略で、広告であることを隠して、SNSや口コミサイトなどで消費者に良い印象を与える投稿を行なったり、インフルエンサーに投稿をしてもらうことです。世間ではやらせの意味で使われている言葉です。
ステマは、景品表示法の優良誤認を促す宣伝方法として、問題視されています。
ステマに該当する宣伝方法とは?
ステマに該当する宣伝方法には、以下のようなものが挙げられます。
消費者を偽って、消費者に優良誤認を促す宣伝方法
2017年に食べログで人気のレビュアーが、週刊誌に評価の高いレビューをしている店舗から過剰な接待を受けていたことがわかりました。それ以前の2012年に食べログでの店舗の評価を操作する目的のレビューを居酒屋が中心になって業者から買っていることがわかりました。
これらは、消費者に優良誤認を促す結果となり、ステマに該当します。
同様に、現在のGoogleビジネスプロフィールのGoogleマップ上の検索順位を上げる目的に良い評価の投稿を大量に書き込むMEO対策もステマに該当します。
金銭の受け取っているにも関わらず広告であることを消費者に伝えない宣伝方法
芸能人やインフルエンサーが金銭を受け取り、SNS、Youtube、ブログなどで広告である旨を伝えずに、良い印象や愛用者であることを偽って情報発信することもステマに該当します。
2012年に大きく取り上げられたペニーオークション詐欺事件の被害が拡大した原因が、芸能人のアメブロでした。バライティー番組やドラマで人気だった芸能人が事情聴取される事態になり、活動自粛に追い込まれました。
現在は、InstagramやTikTokのインフルエンサーがお金を受け取り、あたかも愛用しているかのように投稿していることがわかっており、問題視されています。
ステマは犯罪行為になるのか?
ステマは、日本では景品表示法の優良誤認に該当します。万が一、優良誤認に認定された時は、消費者庁、公正取引委員会、各都道府県のどれかから措置命令が出されます。それに従わないと、課徴金の支払い命令もしくは「2年以下の懲役又は300万円以下の罰金」の支払いが発生します。
ステマは認定されるには、各組織が調査を実施するというハードルがあるため、ほとんどの場合は立証することが難しいです。そのため、ステマがなくならない現実にもつながっています。
ステマは、アフィリエイトサイトやインフルエンサーのSNSやブログも対象になる。
ステマは、自社が管理しているホームページ、オウンドメディア、広告だけが対象ではありません。インフルエンサーのSNS、Youtube、ブログも対象になっています。そして、アフィリエイト広告も景品表示法の規制対象に含まれる見込みです。
ステマとおとり広告の違いとは?
おとり広告とは、実際提供していない商品やサービスで集客をすることで、格安の商品を目玉として広告し、商品の提供を行わない行為が該当します。
おとり広告も、ステマと同様に景品表示法の優良誤認に該当しますので、同じように措置命令が降ります。2022年に2021年の限定商品をほとんどの店で提供していなかったとして、スシローに措置命令が降っています。
おとり広告の話は、「おとり広告とは?【簡単にわかるマーケティング・集客用語集】」で解説をしています。
ステマの何が悪くて問題なのか?
「ステマの何が悪いのか?」という経営者も確かにいらっしゃいます。ステマの問題は、倫理的な問題以外に、発覚した時のリスク(ダメージ)があまりにも大きいことが挙げられます。
消費者を騙しているから。
景品表示法違反になることからもわかる通り、ステマはそもそも許されているわけではありません。広告であることを隠して、あたかも消費者の立場で、最高評価に近い書き込みを多数行うことで、商品やサービスの購入に結びつけているわけですから、消費者を騙しています。
また、芸能人やインフルエンサーが愛用品のように紹介した商品は、実際には使ったことのない商品であり、その情報発信者のファンを裏切るような行為に該当します。
不正な競争を行っていることになるから。
ステマを行うことで、世間の評価を実際より上げています。また、Googleビジネスプロフィールやグルメサイトでは、口コミの評価が露出に影響します。つまり、ステマを行うことで、競合に対して、不正な競争を行っていることにもなります。
発覚した時の損失がとても大きいから。
大規模なステマが発覚した時は、業界に大きな影響を与えています。そして、ステマに関わった企業、インフルエンサー、芸能人は、大きな損失が発生しています。景品表示法の措置命令に従う必要もあり、謝罪文をホームページに掲載しただけでは沈下しない炎上騒ぎに繋がっているのが現状です。
ステマで過去に大きく取り上げられた事例とは?
有名企業でなくてもステマが大きく取り上げられ、詐欺事件として大きく取り上げられてしまったケースもあります。過去に発覚して世間を騒がしたステマの事例を紹介します。
ペニーオークション事件
発覚および騒動になったのは、2012年のことです。
ペニーオークションとは、専用の仮想通貨を購入し、入札ごとに手数料が発生するインターネットオークションの一種です。高額な商品でも0円からスタートし、通常よりも安く落札ことができることで人気になったサービスですが、落札ができなくても手数料が発生することが大きな問題となりました。
架空のIDのボット(自動落札を行うサクラを目的にしたプログラムのこと)が出回り、落札ができない仕組みであったサービスが出回りました。その結果、ペニーオークションサービス運営者が、2012年12月に詐欺罪逮捕、有罪になる事案が発生しました。
この時、ステマが注目された理由が芸能人を使ったマーケティングです。芸能人に紹介でステマの案件を持ちかけ、当時テレビでも活躍していた芸能人がブログで「ペニオクで高額商品を落札した」という虚偽の記事を紹介しました。その結果、ペニーオークションのサービスの顧客が増加しましたが、上記の仕組みで落札できないことが発覚しました。
この事件で、知名度の高い芸能人は、事情聴取を受けることになり、特に知名度の高かったタレントは、致命的なイメージの低下を引き起こし、自粛明けでもテレビ番組への露出が急激に減りました。
食べログ
食べログは、日本最大の飲食店の口コミサイトであり、グルメサイトでもあります。食べログは評価を可視化することに力を入れており、百名店の選出などにも力を入れています。食べログには、評価3.5以上が優良店とされており、これらは顧客側、飲食店側共に認知しています。
評価3.5を獲得するためには、フォロワーの多いレビュアーが評価の高い口コミをすることで、飲食店の評価が上昇するアルゴリズムがありました。
そこで、居酒屋が中心となり、ブローカーから口コミを金銭で購入するステマが横行しました。中には、実際に行かずに口コミを書き込むケースも確認されており、実際のお店からはその評価が程遠いとされる意見も飛び出しました。2011年12月の時点で、金銭を受け取る業者が39社いたことが、翌年1月上旬に明らかになりました。
食べログを運営しているカカクコムはこの件が大きくマスコミに報道された後、一時的に株価を大きく下落させました。
TikTok Japan
動画共有サービス「TikTok」を運営するTikTok Japanは1月25日、同社がTwitterインフルエンサーを活用してサービスのステルスマーケティングをしていたとする報道について、「多くの皆さまに不信を招いた」として謝罪した。「サービスを宣伝するものではなく、広告表記は不要との認識だった」としている。
ITmedia「TikTok、ステマ疑惑について正式謝罪 「宣伝のつもりではなかった」」
Tiktokは、2019年7月から2021年12月の期間中に、20名のTwitterインフルエンサーに対価を支払って投稿を依頼していたことがわかりました。この投稿には、#PRなどの広告である旨が表示されておらず、これらの施策に対しては、「宣伝のつもりではなかった」と謝罪文を出しています。
まとめ
ステルスマーケティングこと、いわゆるステマは、消費者視点であるかのように偽った優良誤認を促す宣伝手法の一つです。優良誤認に認定されてしまうと、景品表示法違反となり、措置命令が消費者庁などから下ります。もし、それに従わなかった時には課徴金や懲役がある可能性があります。
ステマは疑惑を持たれただけでもSNSなどで炎上するリスクがあり、企業イメージの悪化につながります。そのため、インフルエンサーマーケティングなどを実施する時には、ステマにならないように、PR表示をするなど綿密にインフルエンサーとすり合わせをしましょう。