小売店の集客方法14選!成功要因や事例を徹底解説

小売店とは、一般消費者に直接商品を販売する店舗のことで、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、専門店など様々な形態があります。近年、ECサイトの台頭やコロナ禍の影響により、実店舗の集客に苦戦している小売店が増えています。また、消費者の購買行動や価値観も多様化しており、従来の集客方法だけでは十分な効果が得られにくくなっています。
しかし、適切な集客戦略を立て、実行することで、小売店の集客力を向上させることは可能です。本記事では、小売店の集客方法について、成功要因や事例を紹介しながら詳しく解説していきます。
小売店の現状の問題点とは?

小売業界では、2022年から2024年にかけて客数が右肩下がりになっています。フルカイテン株式会社の調査によると、2022年を基準として、2023年には2倍の企業が客数減少を経験し、2024年にはさらに約2.18倍に増加しています。この傾向の背景には、世界的な景気減速やインフレによる消費者の購買力低下、オンラインショッピングの急速な普及、コロナ禍による消費スタイルの変化などがあります。
特に、新型コロナウイルスの感染拡大により、外出控えが定着し、実店舗への来店が減少しました。「不要不急の消費」を控える風潮や在宅勤務の増加による生活パターンの変化も、小売店の集客を難しくしている要因です。
また、インフレの影響で消費者の財布のひもが硬くなり、価格重視の購買行動が増えています。低価格志向のオンラインファストファッション小売業者の台頭からも、この傾向は明らかです。
小売店の集客を成功させるポイントとは?

集客を成功させるポイントは、以下の通りになります。
- 対象にする客層を明確に決定する
- ターゲットの来店や購入を引き起こすセールスポイントを定義する
- 新規顧客だけではなく、リピーターの定着まで戦略に入れる
- 目的に合致した施策を選択し、実行する
- オムニチャネルまたはマルチチャネルを実現して機会損失を防ぐ
メインターゲットを明確にする
小売店の集客を成功させるには、まずメインターゲットを明確にすることが重要です。具体的に誰に利用してほしいのかを定義することで、提供するサービスの価値や広告媒体の選定に役立ちます。この時、ペルソナを設定すると効果的です。ペルソナとは、最も顧客化できる市場の典型的な代表的な人格のことです。
ペルソナ設定では、基本情報だけでなく、性格や価値観などの心理的情報、休日の過ごし方などの行動情報まで具体的に描くことが重要です。ただし、自分の理想ばかり考えて現実に存在しない空想の人格を作らないように注意しましょう。
なお、スーパーマーケットなどターゲットを広く取る場合は、ペルソナもおおよそでよく、専門店ほど明確に定義するのがおすすめです。適切なペルソナ設定により、効果的な集客施策を立案できます。
メインターゲットを動かすことができる強みやセールスポイントとは?
顧客に知ってもらうことで「待ってました!」と思わせ、購入や来店につながる行動を引き起こすためのセールスポイントを洗い出すことが重要です。このセールスポイントは、ホームページやチラシなどの広告で積極的に活用することで、強力な来店意欲のトリガーになります。
セールスポイントとは、あなたの店舗を市場の他の競合他社の中で際立たせ、輝かせるものです。顧客がマーケットで他の競争相手の中でその商品を選ぶ主な理由となります。例えば、「当店の商品は100%オーガニックで、クルエルティフリーで、持続可能な方法で調達された成分で作られています」というのは、環境に配慮した商品を求める顧客を引きつけるセールスポイントとなります。
自店舗の強みを見つけるには、ターゲットオーディエンスを理解し、競合他社を分析することが欠かせません。強いセールスポイントがあれば、顧客との信頼関係を築きやすくなり、ビジネスの成長を促進できます。
新規顧客だけではなく、リピーターを維持することまで考える
新規顧客ばかりに集客を注力しがちですが、新規顧客はフォローアップをしないと、その7〜8割は離脱してしまいます。顧客生涯価値(LTV)を最大化することで利益が最大化されるため、リピーター対策はかなり重要です。
リピーターの存在は実店舗にとって3つの重要な理由があります。まず、売上アップや安定的な売上につながります。継続的に商品を購入してもらえるため、利益が安定します。「5:25の法則」によれば、新規顧客の離脱率を5%下げれば、利益率は25%上がるとされています。
次に、集客コストの削減になります。「1:5の法則」と言われるように、新規顧客の獲得にはリピーターの維持と比べて5倍ものコストがかかるといわれています。リピーターは来店や購入のハードルが低く、集客コストを抑えられます。
最後に、口コミなどによる新規顧客の獲得につながります。リピーターは知人に店舗をおすすめしたり、SNSで投稿したりして、良い評判を広めてくれます。
顧客離れを防ぐために、定期的にメッセージを配信できる環境を整えたり、リピーター向けの会員システムを導入するなど、継続的な関係構築を考えましょう。
目的に合致した最善の施策の選択を行う
ウェブマーケティングの方が効率的でコスパが良いとされがちですが、そうとも限りません。ポスティングチラシや野外看板の設置の方が大きな成果を得られることもあります。目的に応じて最善の集客の施策を選択することが重要です。
店舗の特性や地域性、ターゲット層に合わせた集客方法を選ぶことが成功への鍵となります。例えば、高齢者をターゲットにしている場合、SNS広告よりも新聞折込やポスティングチラシの方が効果的かもしれません。若い世代をターゲットにしている場合は、InstagramやTikTokなどのSNSを活用した方が良いでしょう。
また、費用対効果も重要な判断基準です。限られた予算の中で最大の効果を得るためには、適切な集客手段を選ぶ必要があります。自店舗の状況や目標に合わせて、多様な集客手段を組み合わせるのが理想的です。
オムニチャネルまたはマルチチャネルの実現をする
実店舗のみの場合は、引越しや来店ができないことを理由に顧客離れが発生しやすいです。そのため、同じ商品をネットショップで購入できるようにすることが重要です。可能であれば、同じ条件で購入ができるオムニチャネルの実現を目指すと利便性が上がり、業績アップがしやすい環境作りに貢献します。
オムニチャネルとは、実店舗、オンラインストア、SNS、アプリなど複数の販売チャネルを連携させ、一貫した購買体験を提供する販売戦略です。例えば、オンラインで商品を注文し、実店舗で受け取る「ネット注文・店舗受取」サービスや、実店舗で見た商品をオンラインで購入できるようにすることなどが該当します。
マルチチャネルは複数の販売チャネルを持つことを指しますが、チャネル間の連携は必ずしも強くありません。それでも、顧客の多様なニーズに応えることができ、販売機会の損失を防ぐことができます。
今日の消費者は様々な販売チャネルを行き来するため、柔軟な購買環境を提供することが、競争力の強化につながります。
小売店の実店舗への新規顧客の集客に適している施策

小売店の実店舗に集客をする時に、よく使う広告を解説します。オンラインの広告は、詳細なターゲティングを行なった広告を出すことができます。その反面、オンラインをあまり見ない人にはリーチしない欠点があるため、実店舗に集客をしたい時は、包括的なリーチが得意なオフラインの広告も使います。これによって、リーチを深めることができて、より多くの集客を実現できます。
SNS広告
SNS広告は、Facebook、Instagram、X(旧Twitter)、TikTokなどのプラットフォームで配信される広告です。細かいターゲティングが可能で、年齢、性別、興味関心などの属性に基づいて最適な顧客層にアプローチできます。小さな予算から始められるため、小規模な小売店でも活用しやすい集客方法です。
小売店の場合は、以下の広告がよく使われています。
Meta広告 | FacebookやInstagramに広告を出稿することができる 画像や動画で直接訴求ができる ターゲットの詳細設定もできる メールアドレスなどを使った類似オーディエンスがよく使われる |
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Pinterest広告 | Instagramと同様に画像がメインのSNS よりマニアックな情報を探しているユーザーが多い傾向 専門店との適合性が高い |
例えば、ファッションの小売店なら、新作アイテムの写真を使った広告を、店舗周辺の若い女性に向けて配信することで、効率的に集客できます。広告のクリエイティブを工夫し、定期的に効果測定を行いながら改善していくことが重要です。
SNSの運用
SNSの運用は、アカウントを開設して定期的に投稿を行い、フォロワーとの関係を構築する集客方法です。商品やサービスの魅力、店舗のこだわり、スタッフの人柄などを発信することで、ファンを増やし、実店舗への来店促進につなげることができます。
セブン‐イレブン・ジャパンの事例では、X(旧Twitter)を中心にキャンペーンを展開したことで、若年層の来店回数が10%増加しています。また、フォロワー数が約7万人増え、施策後のフォロワー解除率も低く、現在もオーガニックで増え続けているという成果がありました。
小売店がSNSを運用する際のポイントは、投稿の一貫性と頻度を保つこと、魅力的なビジュアルを使用すること、そしてフォロワーとの対話を大切にすることです。例えば、新商品の紹介、季節のディスプレイ、お得なキャンペーン情報などを定期的に発信することで、フォロワーの関心を維持します。
MEO対策
MEO(Map Engine Optimization)対策は、Googleマップの地図検索エンジンで上位表示されるための最適化施策です。地図アプリで「近くのドラッグストア」「○○市 コンビニ」などと検索した際に、自店舗が上位に表示されるようにすることで、即時購買ニーズのある顧客を獲得できます。
- 生活必需品や贈り物を「すぐに買いたい」というニーズで検索されやすい
- 24時間営業・駐車場完備・ラッピング可能など属性登録で利便性を強調できる
- 商品陳列や店内・外観写真でビジュアル訴求を強化できる
- 新商品入荷やセール・ギフトキャンペーン投稿で新着情報を発信できる
MEO対策の具体的な方法としては、Googleビジネスプロフィールの登録・最適化、口コミの獲得と返信、定期的な投稿による情報更新などがあります。

ローカル検索広告
ローカル検索広告とは、Googleマップで検索をした際に、検索結果上部に表示される広告のことです。検索結果の上位に表示されるリスト(ローカルパック)よりもさらに上位に表示されるため、ユーザーの目に付きやすく、集客を増やす効果が期待できます。
ローカル検索広告はクリック課金型で、ユーザーが広告自体、経路、通話、ホームページへのリンクなどをクリックしたときのみ料金が発生します。相場は1か月あたり20,000〜30,000円程度ですが、競合する他社の広告の出稿具合によって変動します。
小売店がローカル検索広告を活用するメリットとしては、上位に表示されることによる高い視認性、来店見込みのある顧客へのアプローチ、問い合わせや集客増加の即効性などが挙げられます。特に、仕事帰りに何か買いたいと思っているユーザーなど、急な買い物需要を持つ顧客の獲得に効果的です。
メリット | 説明 |
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上位表示 | ローカルパックよりも上位に必ず表示され、認知度アップ |
来店見込み客へのアプローチ | 地域・商品を検索している顧客にダイレクトに訴求 |
問い合わせ増加 | 通話ボタンや経路案内で直接的なアクションを促進 |
即効性がある | 設定後すぐに効果が表れやすい |
SEO対策
SEO対策は、検索エンジンで上位表示されるようにウェブサイトを最適化する施策です。小売店、特に専門店の場合、商品の型式、番号、対応機器名などで検索される可能性が高く、これらは全てBuyクエリ(購買クエリ)となるため、重点的に対策すべき分野です。
Buyクエリとは、ユーザーが今すぐ商品やサービスを購入・契約しようとしている段階の検索クエリで、コンバージョン(CV)に直結する最も重要なクエリの一つです。
小売店がBuyクエリを意識したSEO対策を行うポイントとしては以下があります。
商品・サービスページの最適化 | タイトルタグとメタディスクリプションを最適化する 商品詳細、送料情報、在庫状況などを明確に記載する 購入者レビューやQ&Aを掲載し、信頼性を高める |
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比較ページ・価格情報の提供 | 「○○の価格比較!どこが安い?」といった形式のコンテンツを作成 公式サイトでの購入メリットを伝える記事を作成 |
SEO対策は即効性はありませんが、一度上位表示されれば継続的に集客効果を発揮するため、長期的な視点で取り組むべき施策です。小売店は、自社ECをやっている場合は、特にSEO対策を併用する必要性があります。
ポスティングチラシ
ポスティングチラシは、特定のエリアの家庭に直接チラシを届ける集客方法です。小さな塗装店などの事例から見ると、小売店が効果的にポスティングを行うには、近隣・近場だけにエリアを絞り、2ヶ月に1度程度の頻度で継続的に実施することがポイントとなります。
ポスティングの方法には、「専門のポスティング業者に依頼する」と「自ら行う」の2通りがありますが、最も効果的なのは両方を併用することです。業者に依頼する場合は速やかに大部数の配布が完了する一方で、配布日の指定が難しいというデメリットがあります。自分で行う場合は、配布する家を選べるので小部数で済み、地域の状況も把握できますが、時間を取られるというデメリットがあります。
チラシは1度目では見てもらえない可能性が高く、また見た人も信用してすぐには動かないため、繰り返しの投入が必要です。安定した集客ができるようになったら、徐々に頻度を減らしていくのが理想的です。

野外看板
野外看板は、店舗の存在や商品・サービスを周囲に知らせる効果的な集客方法です。視覚的にアピールできるため、ロゴの認知度向上や競合との差別化に役立ちます。野外看板には、スタンド看板、自立看板、ポール看板、パラペット看板、壁面看板など様々な種類があります。
小売店が野外看板を活用するメリットとしては、継続的なコストがかかりにくい点や、24時間365日宣伝を続けられる点が挙げられます。特に、高い位置に設置するポール看板は遠くからも視認できるため、広範囲からの集客に効果的です。
看板の種類 | 特徴 | 使用場面 |
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スタンド看板 | 移動しやすく屋内外で使用可能 | 飲食店のメニュー紹介、キャンペーン宣伝 |
自立看板 | 風や衝撃に強く安定感がある | 駐車場案内、入口表示、店名やロゴの表示 |
ポール看板 | 高い位置に設置でき遠くから視認可能 | ガソリンスタンド、ファストフード店、コンビニの目印 |
パラペット看板 | 入口上部に設置、建物と一体化 | 商業施設やオフィスビルの表示案内 |
壁面看板 | 建物の壁面に直接取り付け | 店舗名やロゴの大きなアピール |
小売店の場合、店舗の場所や特性に合わせた看板を選択することが重要です。例えば、通行量の多い道路沿いの店舗ならポール看板、商業施設内の店舗ならスタンド看板が効果的かもしれません。
使える立地等が限られていますが、店頭デジタルサイネージも入店率を高めるためには効果的な看板です。動画を出力できる他、その時のニーズに合わせて内容を変更することができます。
YouTube広告
YouTube広告は、YouTube上で配信される動画広告で、リーチや認知を高めるだけでなく、実際の購買行動にも影響を与えるため、小売店の集客に効果的です。GoogleとTalk Shoppeの調査によると、71%が「YouTubeの影響で、もともと買う予定のなかったものを買ったことがある」と回答しています。
森永製菓の「inゼリー」の事例では、YouTube広告を活用した結果、売り上げが13%、販売個数が15%増加するという成果がありました。また、YouTube出稿金額の費用対効果(ROAS)はおよそ650%という高い数字を記録しています。
小売店がYouTube広告を活用する際のポイントとしては以下があります。
- 商品の魅力を視覚的に伝える動画コンテンツを作成する
- ターゲット層に合わせた広告配信設定を行う
- テレビCMとの組み合わせで相乗効果を狙う
YouTube広告の種類にはインストリーム広告(動画の前後や途中に表示)、ディスカバリー広告(検索結果や関連動画に表示)などがあり、予算や目的に応じて選択することができます。特に実店舗の小売業においても、YouTube広告は認知拡大から実際の売上増加まで貢献できることが実証されています。
小売店のリピーターの維持に適している施策

新規顧客ばかり追っていても、顧客が定着しなければ、1人あたりにかかる集客コストが減ることがありません。そのため、何度も足を運んでもらえるような対策が必要になります。集客方法としては、DM、メールマガジン、LINEに登録してもらうことでいつでも連絡ができるようにします。それだけではなく、何度も足を運びたくなるような品揃えを意識することで、来店頻度を高めることができます。
継続して来店したくなる商品を取り扱う
リピーターを増やすには、継続して来店したくなる理由を作ることが重要です。具体的には、特定のジャンルの商品なら何でも揃う専門店化、消耗品を取り扱うことで継続的な来店動機の創出、マニア向けの品揃えの充実などが効果的です。
例えば、ホビーショップならプラモデルだけでなく、塗装道具やカスタムパーツも豊富に取り揃えることで、作る楽しみから完成後の楽しみまで提供できます。また、ペットショップなら定期的に必要になるフードやトイレ砂などの消耗品と、季節ごとに変化するウェアやアクセサリーを組み合わせて提供することで、継続的な来店を促せます。
商品の品揃えを考える際のポイントは、次の通りです。
- 顧客のライフサイクルに合わせた商品展開
- 定番商品と新商品のバランスの良い品揃え
- 競合店にはない独自の商品ラインナップの構築
さらに、商品の魅力的なディスプレイや、スタッフによる商品知識の豊富な説明も、再来店を促す要素となります。顧客の関心や悩みに合わせた商品提案ができるよう、スタッフの教育も重要です。
DM(ダイレクトメール)
DMは、既存顧客に直接メッセージを届ける効果的な方法です。ハガキや封書などの形式で、セール情報や新商品の案内、会員限定イベントの告知などを送ることで、リピート購入を促進します。
小売店がDMを活用する際のポイントとしては、以下が挙げられます。
- 購買履歴に基づいたパーソナライズされた内容にする
- シーズンやイベントに合わせたタイミングで送付する
- 会員限定の特典や割引情報を含める
- 視覚的に魅力的なデザインで注目を集める
DMの効果を高めるためには、顧客データベースの整備が欠かせません。購買頻度、購入商品、金額など、顧客の行動データを分析し、セグメントに分けてアプローチすることで、反応率を高めることができます。
例えば、長期間来店していない顧客には「お久しぶりです」という文言と共に特別割引クーポンを送ったり、高額商品を購入した顧客にはアフターケアの案内や関連商品の提案を行ったりするなど、顧客ごとに異なるアプローチが可能です。
DMは一見すると古典的な手法ですが、デジタル疲れが進む現代において、実物の手紙が持つ温かみや特別感は、むしろ差別化要素として機能します。
サポートの充実化
顧客満足度を高め、リピーターを増やすためには、購入後のサポート体制の充実が欠かせません。製品の使い方や疑問点に丁寧に対応することで、顧客との信頼関係を構築し、長期的な関係を維持することができます。
小売店がサポートを充実させる方法としては、以下が考えられます。
- 店舗内での商品説明や使い方のレクチャー
- 購入後の問い合わせに対応する専用窓口の設置
- 商品のメンテナンスやアフターケアサービスの提供
- 製品に関する情報やTipsをまとめたニュースレターの配信
例えば、家電量販店なら製品の設定サポートや使い方の説明会を定期的に開催したり、アパレルショップなら衣類のケア方法やコーディネート提案を行ったりすることで、顧客の満足度を高められます。
サポートの質を高めるためには、スタッフの教育と知識の向上が重要です。顧客からの質問に的確に答えられるよう、商品知識を身につけ、コミュニケーション能力を磨く必要があります。また、顧客の声に耳を傾け、フィードバックを商品やサービスの改善に活かすという姿勢も大切です。
ユーザー参加型のSNSキャンペーン
ユーザー参加型のSNSキャンペーンは、顧客の積極的な参加を促し、コミュニティ意識を醸成することでリピーターの維持・増加に効果的です。例えば、ペット用品店であれば、商品を使った愛犬のフォトコンテストを実施することで、顧客のエンゲージメントを高めることができます。
このようなキャンペーンの具体的な例としては、以下のようなものが考えられます。
- 商品の使用シーンを投稿してもらうコンテスト
- ハッシュタグを付けた投稿で割引クーポンがもらえるキャンペーン
- お気に入りの商品とその理由を共有するリレー形式の投稿企画
- 季節やイベントに合わせた商品活用法を募集するコンテスト
セブンイレブンの事例では、Xを中心にしたキャンペーンを展開し、若年層の来店回数が10%増加するという成果を上げています。また、フォロワー数が約7万人増え、施策後のフォロワー解除率も低く、継続的な効果が見られました。
ユーザー参加型のSNSキャンペーンを成功させるポイントは、参加のハードルを低くすること、魅力的な景品や特典を用意すること、そして参加者の投稿を積極的に店舗のSNSで紹介することです。顧客の声を大切にし、コミュニケーションを重視することで、単なるキャンペーンを超えた関係構築が可能になります。

メールマガジン
メールマガジンは、定期的に顧客に情報を届けることで、ブランドの存在感を維持し、リピート購入を促す効果的な施策です。セール情報や新商品の案内、季節ごとのおすすめ商品、店舗イベントなどを配信することで、顧客との接点を継続的に持つことができます。
メールマガジンの配信は、自社ECの機能に付いている場合もありますし、顧客管理システム(CRM)に付いている場合もあります。メール配信システムを新規で契約する場合は、性能や到達率が異なりますので、最低限HTMLメールのエディタが揃っていて、到達率の対策を実施しているシステムを選びましょう。

小売店がメールマガジンを活用する際のポイントは以下の通りです。
- 定期的に配信し、ブランドの存在感を維持する
- 顧客セグメントに合わせた内容をパーソナライズする
- 視覚的に魅力的なデザインで読みやすくする
- 明確なCTA(Call To Action)を設定し、行動を促す
メールマガジンの内容例としては、以下のようなものが考えられます。
- 新商品の紹介と購入特典の案内
- 限定セールや会員限定割引の告知
- 商品の使い方や活用法を紹介するコンテンツ
- 季節ごとのおすすめ商品やコーディネート提案
メールマガジンの効果を高めるためには、開封率や各リンクのクリック率などの指標を継続的にモニタリングし、改善していくことが重要です。時間帯や曜日、件名の付け方、メール本文の長さなど、様々な要素をA/Bテストで検証し、最適化していくことで、より効果的なメールマーケティングが実現できます。
LINE公式アカウント
LINE公式アカウントは、国内で多くのユーザーが利用するLINEを活用した顧客コミュニケーションツールです。プッシュ通知のような即時性と、メッセージアプリの親しみやすさを兼ね備えており、リピーター維持のために効果的な施策です。
小売店がLINE公式アカウントを活用するポイントとしては、以下が挙げられます。
- 友だち登録特典を用意し、アカウントの登録を促進する
- 限定クーポンや特別セール情報を配信する
- リッチメニューを活用し、ブランドや商品情報へのアクセスを簡単にする
- タイムライン機能で新商品やキャンペーン情報を定期的に発信する
LINE公式アカウントの強みは、高い開封率とクリック率です。メールマガジンと比較して、LINEメッセージは開封率が大幅に高く、即時性も高いため、タイムリーな情報発信に適しています。
例えば、悪天候でセールの来店が減少しそうな日に、急遽クーポンを配信するといった柔軟な対応が可能です。また、LINE公式アカウントでは年齢や性別、居住地などの属性情報や、メッセージの開封状況などのデータを分析できるため、効果測定やセグメント配信にも活用できます。

小売店の集客の成功事例

小売店の集客では、成功している施策を多く知ることも重要です。ここでは、わかりやすい大手の店舗が具体的に何をやっているのかを紹介します。
セブン-イレブン:SIPストアの成功事例の水平展開
セブン‐イレブン・ジャパン(SEJ)は、新コンセプト店舗「SIPストア」で得られた成功事例を水平展開し、集客力と売上の向上を実現しています。SIPストアとは「全国約2万1000店舗が拡大均衡していくためのテスト店」と位置づけられた実験店舗で、出来立て商品の拡充や生活デイリー・冷凍食品の品揃え強化などが特徴です。
具体的な成功事例として「お店で揚げたカレーパン」が挙げられます。2023年の累計販売数は約7,700万個を達成し、「最も販売されている揚げたてカレーパンブランド」としてギネス世界記録に認定されました。2024年9月時点で5,000店舗にて販売され、平均販売数は1日当たり約25個、日販でプラス0.4%、荒利益でプラス0.2%の効果を出しています。
また、コーヒー、紅茶、スムージーなどの出来立てドリンクも好調で、特に紅茶は導入店舗ではコーヒーとほぼ同数が売れるという実績を上げています。これらの成功事例をもとに、焼成パンやドーナツ、紅茶といった出来立て商品や、納豆や豆腐といった生活デイリー、冷凍食品の品揃えを全国の店舗に広げていく計画です。
セブン-イレブンの事例から学べる点は、顧客ニーズに合わせた商品開発と品揃えの重要性、出来立ての価値を提供することの効果、そして新しい取り組みを徹底的にテストしてから水平展開するという戦略の有効性です。
ユニクロ:オムニチャネルと技術革新の融合
ユニクロの成功は、オムニチャネル戦略と機能性商品開発の両輪に支えられています。オンラインと店舗を連携させた「店舗受取サービス」により、EC購入者の30%が店頭で追加購入を行い、売上を15%押し上げました。また、オンラインで購入した商品の店舗返品可能率は98%に達し、顧客利便性を大幅に改善しています。
商品面では、東レと共同開発したHEATTECHとAIRismが突破口となりました。HEATTECHは発売から10年で累計10億枚を販売し、冬季の売上を25%増加させました。さらに、「LifeWear」コンセプトを掲げ、シンプルで普遍的なデザインを追求。2024年には、サステナブル素材使用率を50%に拡大し、Z世代からの支持を獲得しています。
グローバル展開では、現地の気候や文化に合わせた「ローカライズ戦略」を採用。東南アジアではUVカット機能付き衣料を、欧州ではミニマルデザインの商品を展開し、地域別売上成長率7-12%を達成しました。
3COINS:トレンド感覚とSNS活用のシナジー
3COINSは、100円ショップとの差別化を図るため、プライスポイントを330円に設定し、「ちょっと良い日常」をコンセプトに商品開発を進めています。2024年のヒット商品「コンパクト折り畳み傘」は、SNSで「#スリコ雨の日コーデ」がトレンド入りし、2週間で10万本を売り上げました。
SNS戦略では、InstagramとTikTokを軸にした「見せる陳列」を強化。新商品発表時には、インフルエンサーと連携した「部屋コーディネート動画」を投稿し、30代女性のエンゲージメント率を22%向上させました。また、ハッシュタグ「#スリコ購入品」を使ったUGC(ユーザー生成コンテンツ)キャンペーンでは、投稿1件あたりの平均売上貢献が1,200円と算出されています。
商品開発では、市場調査から「面倒くさがり層」に焦点を当て、組み立て不要の「完成品DIYキット」を投入。従来のDIY商品に比べ、購入率が3倍に跳ね上がり、リピート購買率45%を記録しました。
イケア:オムニチャネルと体験価値の革新
イケアの成功は「体験型集客」と「デジタル統合」の両輪に支えられています。2024年時点でEC売上比率が38.5%に達し、店舗とオンラインのシームレスな連携が特徴です。特に注目すべきは以下の3つの戦略です。
AR技術を活用した「IKEA Place」アプリでは、自宅の空間に家具を仮想設置できます。この機能により、都市型店舗(原宿・渋谷など)では限られた展示スペースを補完し、商品認知率を23%向上させました。さらに2024年には「インテリアスタイルラボ」を導入し、バーチャル空間で500以上のルームセットを再現しています。
「Circular Hub」では中古家具の買取・再販を実施し、Z世代の来店率を17%増加させました。2023年の「Buy Back Friday」キャンペーンでは、買取価格を30%上乗せし、SNSでの投稿数が前年比3倍に拡大しています。
キッズルーム「スモーランド」の無料託児サービスは、週末の平均滞在時間を2.8時間に延ばすことに成功しています。レストランでは299円の朝食セットを提供し、開店前からの列を作る仕掛けで、午前中の来店者数を42%増加させました。
まとめ
小売店の集客を成功させるためには、まずメインターゲットを明確にし、そのターゲットを動かす強みやセールスポイントを見出すことが重要です。同時に、新規顧客の獲得だけでなく、リピーターの維持にも力を入れることで、安定した売上と利益を確保できます。
実店舗への新規顧客集客には、SNS広告やSNS運用、MEO対策、ローカル検索広告、SEO対策(特にBuyクエリ)、ポスティングチラシ、野外看板、YouTube広告などが効果的です。これらの施策は、店舗の特性やターゲットに合わせて選択し、組み合わせることで最大の効果を発揮します。
リピーターの維持には、継続して来店したくなる商品の取り扱い、DM、サポートの充実化、ユーザー参加型のSNSキャンペーン、メールマガジン、LINE公式アカウントなどが有効です。顧客との長期的な関係構築を目指し、継続的なコミュニケーションを心がけましょう。
セブン-イレブンや森永製菓の成功事例からも分かるように、顧客ニーズに合わせた商品開発や品揃え、SNSを活用した若年層へのアプローチ、様々な広告メディアの効果的な組み合わせが、小売店の集客成功につながります。
現代の変化する消費者行動に対応するため、オムニチャネルやマルチチャネルの実現も視野に入れ、実店舗とオンラインの両方でシームレスな購買体験を提供することが、これからの小売店の競争力を高める鍵となるでしょう。