セブンイレブンの5本買うと1本もらえるキャンペーンの仕組みは?マーケティングの施策図鑑

「5本買うと1本無料!」
コンビニでよく見かけていたこのキャンペーン、あなたは単なる値引きだと思いますか?実は、セブン-イレブンが展開するこの施策には、顧客を惹きつけ、売上を最大化するための巧妙なマーケティング戦略が隠されています。
この記事では、セブン-イレブンのキャンペーンを事例に、顧客の心をつかむ戦略のポイントを3つ解説します。
電子マネー「nanaco」で顧客を囲い込む
このキャンペーンの最大の特徴は、支払いを「nanaco」に限定している点です。これにより、顧客はキャンペーン参加のためにnanacoにチャージする必要に迫られます。
- チャージ残高の消費: 一度チャージすれば、「残高を使い切ろう」という心理が働き、次回の来店へと自然につながります。
- 顧客の固定化: nanaco利用が習慣化することで、顧客は他のコンビニではなくセブン-イレブンを選ぶようになります。
これは単なるポイントサービスではなく、顧客を自社経済圏に「囲い込む」ための優れた戦略といえます。
客単価を自然に引き上げる
当初は「飲み物1本だけ」と思っていた顧客も、「5本買えば1本無料なら…」と、まとめ買いを選択する可能性が高まります。
- 購入点数の増加: キャンペーンが「ついで買い」を誘発し、結果的に一人当たりの購入金額(客単価)を引き上げます。
- 自然な提案: 売り手側が強く推奨せずとも、顧客が自ら「お得だ」と感じて購入点数を増やすため、満足度を損ないません。
この「顧客に選択させる」アプローチが、客単価アップを成功させる鍵です。例えば、ジュース1本の価格が120円、仕入価格が70円とすると、1本売ることで、50円の利益が出ます。5本で1本プレゼントでも、230円の利益が出ることがわかります。
1本のみの売上 | 2本のみの売上 | 3本のみの売上 | 4本のみの売上 | 5本の売上 | |
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1本の販売価格 | 120 | 120 | 120 | 120 | 120 |
仮の原価 | 70 | 70 | 70 | 70 | 70 |
利益額 | 50 | 50 | 50 | 50 | 50 |
販売本数 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
値引き前利益 | 60 | 120 | 180 | 240 | 300 |
値引き | -70 | ||||
利益 | 60 | 120 | 180 | 240 | 230 |
来店頻度を高め、店舗全体の売上を向上させる
お得なキャンペーンは、顧客が店舗に足を運ぶ強力な「きっかけ」となります。
- 来店習慣の醸成: キャンペーンを目当てに来店回数が増えれば、それが顧客の生活サイクルに組み込まれ、来店が習慣化します。
- 関連商品の購入促進: 店内に滞在する時間が増えることで、ジュース以外の新商品やお弁当、冷凍食品など、他の商品にも目が向きます。結果として、店舗全体の売上アップに大きく貢献するのです。
この戦略は、特定の商品だけでなく、様々なカテゴリーで応用されています。
最近は、1本購入したら、1本プレゼントに変化
キャンペーン期間中に特定のジュースを購入すると、受取期間中にジュースを無料でプレゼントしてもらえるキャンペーンが現在ではよく行われています。これは、プレゼント受取期間中の再来店を作ることで、他の商品のついで買いを引き起こすことができます。
5本購入すると1本プレゼントは、顧客単価を上げる方法でしたが、1本購入したら1本プレゼントは、リピーター対策といえます。そして、後者の方が荷物にならない分だけ、気軽に受けやすいサービスともいえます。
まとめ:顧客心理を捉えた戦略でビジネスを加速させよう
セブン-イレブンのキャンペーンは、単なる値引きではありません。顧客の心理と購買行動を深く理解し、「顧客の囲い込み」「客単価アップ」「来店頻度の向上」という3つの目的を同時に達成する、非常に計算されたマーケティング戦略なのです。
自社の製品やサービスにこの視点を取り入れ、顧客が喜んで参加したくなるような仕掛けを考えてみてはいかがでしょうか。