コストコで考える超繁盛するためのマーケティング
コストコとは、アメリカワシントンに本社を置く会員制倉庫型小売店のことです。世界12ヶ国で展開しており、店舗数は817店舗です。2021年度の通年売上高は1921億ドルです。円に換算すると22兆円です。
コストコは、日本では、主に自動車保有率が高く、高速道路のインターチェンジの近くに展開しており、休日ではその周辺の道路が渋滞するほどの人気ぶりです。コストコはわかりやすいマーケティングを行なっていることでも有名な小売店でもあります。そこで、コストコが超繁盛店であることを支える仕組みについて紹介したいと思います。
コストコは家族で出かけたくなるし、買いたくなる仕組みを採用している。
コストコは行ったら買いたくなる仕組みを豊富にしています。
コストコはいわゆる管理の無駄を最小限にするため、パレットにのった商品をそのまま倉庫型店舗に陳列する方法を採用しています。これによって、綺麗に陳列をし直す人件費や商品を保管するコストを削減しています。売れる商品を大量に仕入れるため、廃棄ロスを狙ったまとめ買いを採用しています。
そして、その販売力にも注目です。行動経済学を積極的に採用し、主にファミリー層が積極的に足を運ぶようにしています。また、顧客単価も高く、1回の購入が5万円を超えることも珍しくありません。
売上高は、客数、顧客単価で決まります。これらの対策が抜け目なく行われているため、参考にできる点が多く、集客力の向上に役にたちます。
コストコの立地
コストコは、ホームページで不動産の情報を募集しています。
敷地面積 7,000坪以上
建築面積 約4,200坪
半径10km=人口50万人以上
用途地域=準工、商業、近隣商業、他
駐車場収容台数 800台以上
車のアクセスの良い物件
購入・定期借地(40年以上)・建貸コストコ(出店計画より)
注目する点は、車のアクセスの良い物件です。当たり前ですが、コストコの商品の一個のサイズが大きいため、電車での持ち運びは不可能です。そのため、想定される顧客の車の保有数、高速道路のインターチェンジ近くの出店が多いようです。
1.コストコのマーケティング:有料会員制
コストコは、有料会員制を導入していることで知られています。コストコには個人向けと法人向けの会員カードがあり、masterカードによる決済機能がついている会員カードもあります。
種類 | 年会費 |
---|---|
ゴールドスター(個人) | 4,840円 |
エグゼクティブ・ゴールドスター(個人クレジットカード) | 9,900円 |
ビジネス | 4,235円 |
エグゼクティブ・ビジネス | 9,900円 |
全員に年会費を課すことで、以下のメリットがあります。
1-1.有料会員制による囲い込み
有料会員制をとることで、顧客にはその支払った分だけお得に買い物をしたい、もとをとりたいと思います。日本では倉庫型小売店自体が非常に少なく、コストコならではの独自の商品があります。そのため、休日に家族で買い物に訪れる候補として、コストコが挙がりやすくなります。このもとを取りたいと思う気持ちにすることをサンクコスト効果と呼びます。
1-2.有料会員制による利益の獲得
コストコの2016年の売上総利益率は13.34%(直近12ヶ月データより)イオンは財務諸表から27.19%で大きな差があることがわかります。
当然、イオンの場合は小売以外のビジネスも行っていることから同じ尺度で考えるのは不自然ですが、広い売り場を持っている店舗として比較すると、かなり利益率が低いことがわかります。ちなみに、北関東および南東北でスーパーを展開しているヨークベニマルの場合、売上総利益率は23.47%です。
このため、経営を安定化させるための柱として、利益の確保のために有料会員制を導入していることになります。
1-3.会員制による経営の効率化
レジでカードの提示が必須になります。会員情報および購入履歴が社内にストックされることから、正確な客層、商圏、購買傾向をみることができます。これにより、無駄のない仕入れを行うことができる他、来店状況を把握するRFM分析をすることができます。
RFM分析とは、Recency (最近の購入日)、Frequency(来店頻度)、Monetary (購入金額ボリューム)の 3 つの指標で顧客をランク付けする手法です。ランク分けをすることで、ランクに合わせたサービスや購入商品の傾向にマッチした商品の紹介をすることができます。
2.コストコのマーケティングその2.集客
コストコの集客は効率化されていることでも知られています。
2-1.来店動機が豊富
コストコの特徴は、その遊園地のような感覚で買い物をできることのほかに、特徴的なフードコートがあります。価格がかなり安く、買い物帰りの軽食をここで取る家族も多いです。
クォーターパウンドホットドッグは、おかわり自由なドリンク付きで180円。ケチャップ、マスタード、オニオンなどの調味料は自分の好きな分だけ使うことができるため、エンタメ性もあります。
Googleの位置データから算出されている混雑する時間帯をみると、12時〜15時の時間帯が特にコストコは混み合っていることがわかります。コストコでお買い物のついでに小腹が空いて、フードコートでホットドックを食べるということがルーティンになっていそうです。
2-2.お得な買い物ができるブランドを維持
コストコは、朝や昼の情報番組、バラエティ番組の企画によく登場します。この度に、出演する芸能人は「安い」「お得だ」と言います。これによって、コストコは安く買い物ができるイメージが定着しています。
実際は、コストコは単価の安い商品もありますが、ディスカウントスーパーに比べると単価の高い商品も含まれており、すべてが安いわけではありません。
一部のイメージが全体的なことであるように思い込んでしまうことを代表性ヒューリスティックと呼びます。コストコは行動経済学を積極的に有効活用しています。
2-3.チラシなどの販売促進は電子化されている。
現在コストコは、メールマガジンで会員に向けたセールの情報発信を行なっています。HTMLメールを使い、チラシのような形をしたメールを採用しています。メールマガジンは、準備期間を必要とせず、配信にかかる期間もチラシなどのオフライン広告に比べて圧倒的に短いのが特徴です。また、配送コストも非常に安いため、販売促進費用を抑えて集客を行なっていることがここでわかります。
3.コストコのマーケティングその3.顧客単価
コストコは、顧客単価を高める対策を積極的に行なっていることでも知られています。
3-1.1個の商品の単価が高い。
コストコはまとめ買いや大容量のものを主に取り扱っています。そのため、通常のスーパーで買い物をしているような感覚だと、単価が高いため、1回の買い物が数万円になってしまうことも珍しくはありません。他のサイトでは、顧客単価は15,000円と書かれていましたが、私が店員に直接聞いた時は、クレジットカードを利用する顧客であれば1回の買い物で5万円を超えることも多いということでした。
3-2.ショッピングカートが大きい。
コストコのショッピングカートは、通常の店舗のものに比べるとかなり大きいです。これは、配送のまま陳列しているコストコの商品は大きいものもあるため、運べるようにするためでもありますが、カートが大きいといっぱいにしたいという気持ちが働くため、無駄なものも購入してしまうことになります。
3-3.お買い得なものとそうでないものが混在している。
コストコの商品は、衝動買いが起こりやすいものを中心に扱っています。また、コストコでは、単価の安い商品もありますが、他店と同水準の商品も多く含まれています。コストコのインストアマーケティングの特徴として、導線上には、販売員による実演が行われています。そこで、衝動買いを引き起こすことにより、顧客単価を上げています。
3-4.家電などの高額商品を入り口などに配置している。
コストコをはじめとする外資系の小売店では、順路が決まっています。
コストコでは、入り口にパソコンや家電を配置し、食品コーナーの脇に、小型倉庫などを陳列しています。これは、高額な商品の間に比較的単価の低い商品を陳列すると、その単価の低い商品が特に安く感じるアンカリング効果を利用した陳列を行なっていると言えます。
4.コストコのマーケティングから学べること
4-1.会員制(サブスク)の導入
完全有料会員制にしてしまうと、知名度の低い店舗は逆に来店のハードルを高めてしまいます。居酒屋では、部分的にサブスクを導入することで、サンクコスト効果で、他店舗への流出を最小限にする対策が行われています。モンスターパスを利用することで、一部のサービスを有料サブスク化することができます。
4-2.看板商品(フロント商品)の作成
いわゆるお目当商品や来店のハードルを下げるようなお手軽商品を用意します。
例えば、「あそこのおはぎは手作り感が味わえて、大きいし、いつもあるんだよ。」といった話題を耳にしたことはありませんか?主婦の店さいちの秋保のおはぎは、非常に有名で、この店舗はスーパーであるにも関わらず、食べログに掲載されている面白いお店でもあります。テレビでも紹介され、この観光客も訪れる店舗になっており、いかに看板商品が重要であるのかがわかる事例でもあります。
看板商品は、独自性のある日常的に消費するものの方が良いとされています。ずっと使えるものや他所でも扱っている商品では、来店動機を作れませんし、競合店も簡単に模倣できてしまいます。
4-3.ネットの販売促進方法の積極的活用
コストコのビジネスモデルの場合、売上総利益率が低いため、健全な経営を行うためには、販売促進費用の節約が重要になります。国土が広大なアメリカの小売店であることもあり、国内のスーパーのように紙の配布で告知せず、販売促進はデジタル化されています。
SNSの導入もいいですが、ターゲットを既存顧客に絞ったメールマガジン及びLINE@の導入は売上アップに大きな影響を及ぼしやすいです。平均来店回数が年に4回ならば、5回になった時点で、来店回数が25%の増加になります。結果年商も25%上がることになるからです。
最終更新日 : 2023年10月28日