ターゲティングとは?市場選定の方法と6Rフレームワーク

顧客の選定を間違えると、自社の製品やサービスを積極的にプロモーションをしても良さを理解してもらえず、売上を伸ばすことができません。自社の強みを最大限生かし、売上を作るためには、適切な市場を選択することが重要です。
自社が優位に立ち、売上や利益を獲得することができる顧客が集まる市場を選ぶことをターゲティングと呼びます。このコンテンツでは以下のことを学習できます。
- ターゲティングの意味
- STP分析とは?
- ターゲティングをさらに精度を上げるペルソナとは?
- ターゲティングのフレームワーク「6R」とは?
ターゲティングとは?
ターゲティングとは、自社が優位にたってビジネスができる特定の顧客層や市場を狙うことで、販売を成功に導くための重要な要素です。良いターゲティングを実現するための6Rフレームワークには、適切な対象者、メッセージ、チャンネル、タイミング、場所、価格の6つの要素が含まれます。
ターゲティングは、ブランディングやマーケティング戦略において重要な役割を果足します。
ターゲティングの方法とは?
ターゲティングで標的市場を絞り込むためには、統計データを使います。標的市場が十分な市場規模がなければ、広告がリーチしづらくなり、集客に費用がかかります。市場を切り分ける統計データとしては以下のものが用いられます。
- デモグラフィック情報(年齢、性別、職業など)
- ジオグラフィック情報(地域、都市規模など)
- サイコグラフィック情報(価値観、ライフスタイルなど)
- ビヘイビアル情報(購買行動、利用状況など)
飲食店・美容室などの店舗ビジネスの場合、商圏がある程度設定されています。そこから、性別やライフスタイルを考えて、広告を選んだり、チラシの内容を見直したりします。
商圏が特にないサービス業では、サイコグラフィック情報を中心に、標的市場が抱えやすい問題を具体化して切り分けることが多いです。
ありがちなターゲティングの間違いとは?

よくある間違いとして、ターゲティングをデモグラフィック情報(年齢と性別)だけで切り分けているケースです。
多様性に溢れている現在では、同年代でもライフスタイル・価値観が全く異なります。20代女性でも仕事を重視する人もいれば、家族を重視する人がいます。サイコグラフィック情報に大きな違いがあれば、購買行動も異なります。
ニッチ市場は難易度が高い。
ニッチ市場というのは、敵がいない隙間市場を意味します。競合は存在しませんが、市場規模が小さく市場も教育されていません。そのため、顕在的ニーズが存在しないので、潜在的なニーズを掘り起こすのに相応の広告費が必要になります。
そして、市場規模が小さい場合、客数も少なくなりますので、客単価も高めに設定する必要があります。例えば、市場初の教師専門カウンセリングサービスをしたいと考えたときに、個人で数十万円の捻出をするのは難しいと考えます。
ニッチ市場を考えるときは、優位性が自社にあり、顧客単価が高くても問題がない市場を選択しましょう。(海外メーカーを専門で取り扱う農業備品屋、高級車限定のアクセサリー屋、看護師限定の転職エージェントなど)
STP分析とターゲティングの関係性とは?
STP分析は、セグメンテーション(Segmentation)、ターゲティング(Targeting)、ポジショニング(Positioning)の頭文字を取ったマーケティング戦略の立案に使われる市場を絞り込むために用いる分析方法です。ターゲティングは、このSTP分析の中の1つの要素であり、セグメンテーションによって市場を細分化した後、ターゲットとなる顧客層を特定することを意味します。
ターゲティングは、STP分析の中心的な役割を果たし、適切なターゲットを選択することで、効果的なマーケティング戦略が実現されます。

ペルソナ(顧客像)を具体化してターゲティングを精密にする
ターゲティングして標的市場を設定しただけでは、抽象的な把握になりがちで、チームで、想定している人物像にバラツキが発生しがちです。
そこで登場するのがペルソナ分析です。

ペルソナは、ターゲティング手法の一つで、製品やサービスの象徴的な仮想ユーザーを設定し、マーケティング戦略を立案する際に活用されます。ペルソナ分析はターゲティング分析より具体的にイメージし、特定の個人ユーザーに落とし込んだマーケティング手法です。
ペルソナを設定する具体的な方法は以下の手順で進められます。
- ペルソナに設定する人物の情報収集を行う。
- 顧客データや体験談を集めます。ペルソナは標的市場の代表的な人物を意識するため、購買金額が高い固定客や今後獲得したい顧客を意識します。
- 洗い出した情報を型に当てはめる。
- データから顧客インサイトを読み解き、顧客ニーズを抽出します。
- 明確なペルソナ設定を行う
- ペルソナを具体的にデザインし、個人のプロフィールや特性を設定します。架空の名前、年齢、性別、職業、家族像、世帯収入、ライフスタイルを設定します。



ペルソナとは?ペルソナがマーケティングで重要視される理由とは?
ターゲティングの基本である6Rフレームワークとは?
ターゲティングの6Rフレームワークは、効果的なターゲティングを進めるための6つの指標を提供しています。それらは次のとおりです。
① 有効な市場規模(Realistic Scale)
市場の規模が十分に大きいかどうかを評価することを意味します。市場規模が小さすぎると、商品やサービスを展開しても利益が得られない可能性があります。そのため、事業戦略を立てる際には、対象となる市場規模が適切であることが重要です。
有効な市場規模を評価する際には、ターゲットとする顧客の数や市場での売上規模を調査し、市場シェアの獲得や売上目標の達成が現実的であるかどうかを検討します。また、市場規模の評価は定期的に行うことが望ましく、市場の状況や競合状況の変化に対応できるように柔軟な戦略を立てることが重要です。有効な市場規模の分析により、市場の潜在的な成長性やビジネスチャンスを見極めます。
② 成長性(Rate of Growth)
市場が成長しているか、また今後もニーズが増えることが期待できるかどうかを評価することを指します。市場の成長性が高いほど、ビジネスの拡大や利益向上の可能性が高まります。
成長性を評価する際には、過去の市場動向や業界の成長率を調査し、今後の市場規模の推移や需要の増加が見込まれるかどうかを分析します。また、技術革新や社会的トレンド、政策変更など、市場成長に影響を与える要因も考慮することが重要です。
市場の成長性を把握することで、早期にビジネスチャンスを見つけ、競合他社に先駆けて市場に参入することが可能になります。市場の成長性を適切に評価し、戦略に反映させることで、効果的なターゲティングが実現されます。
③ 顧客の優先順位(Rank)
ターゲットとなる顧客層の中でどの顧客が最も重要であるか、また自社の商品やサービスに対して最も高い関心を持っているかを評価することを意味します。適切な顧客層を優先的にターゲットにすることで、効果的なマーケティング活動が可能になります。
顧客の優先順位を決定する際には、顧客のニーズや購買力、ロイヤリティ、顧客満足度などの指標を考慮します。また、顧客セグメントごとの売上や利益率、顧客獲得コストなどのビジネス指標も重要な判断基準となります。
顧客の優先順位を正しく評価することで、リソースを効率的に配分し、最も価値のある顧客にフォーカスしたマーケティング戦略を策定できます。これにより、売上や利益の最大化が期待でき、事業の持続的な成長につながります。
④ 到達可能性(Reach)
ターゲット顧客に対して効果的にアプローチできるかどうかを評価することを指します。ターゲット顧客にアクセスしやすく、効果的なコミュニケーションが可能であることが、マーケティング戦略の成功にとって重要です。
到達可能性を評価する際には、ターゲット顧客が利用するメディアやチャネルを調査し、それらを通じて適切なマーケティングメッセージを伝えることができるかどうかを検討します。また、広告やプロモーション活動の効果測定も重要であり、適切なターゲット顧客にアプローチしているかを確認することが求められます。
適切な到達可能性を確保し、戦略に反映させることで、効果的なターゲティングが実現されます。
⑤ 競合状況(Rival)
市場における競合企業との関係や競争の激しさを評価することを意味します。競合状況を適切に把握し、差別化や競争力の向上に取り組むことが、マーケティング戦略の成功にとって重要です。
競合状況を評価する際には、市場シェア、競合企業の戦略や強み・弱み、市場のエントリーバリアなどを調査し、自社のポジションや競争力を分析します。また、競合状況の変化や新規参入企業に対する対策も検討することが求められます。
競合状況を適切に評価し、戦略に反映させることで、自社の商品やサービスに対する競争優位を確立し、市場での地位を強化することができます。さらに、競合企業との協業や提携によって新たなビジネスチャンスを創出することも可能です。効果的なターゲティングを実現するためには、競合状況を正確に把握し、適切な戦略を策定することが重要です。
⑥反応の測定可能性(Response)
マーケティング活動に対する顧客の反応や効果をどれだけ正確かつ効率的に測定できるかを評価することを意味します。適切な効果測定が可能であることが、マーケティング戦略の最適化やROIの向上につながります。
反応の測定可能性を評価する際には、顧客データの収集や解析、KPIの設定や効果測定方法などを検討します。また、データの品質や信頼性、測定ツールの適切性も重要な判断基準となります。
反応の測定可能性を高めるためには、データドリブンなマーケティング活動やテストマーケティングの実施、効果測定ツールの適切な活用が効果的です。オンラインの仕組みを積極的に導入することで、適切な反応の測定可能性を確保し、マーケティング活動の効果最大化が期待できます。
まとめ|ターゲティングで成長の機会を作る

ターゲティングは、対象にしているセグメントの選択を間違ったり、顧客理解が古いままであると事業のブレーキになります。
実際あった相談の中には、60代以上比較的年配の客層を対象にしている食品製造業が、自分がパソコンもスマホも持っていないということで、「高齢者はクレジットカードを使わない」と決め付けていたことや市場開拓を全く考えようとしないことがありました。高齢者を主軸にするビジネスは、死去や病気などによる顧客減少があり、将来的にも拡大することはありません。
「ターゲティングとは、自分が勝てる市場の選択である。」
自社の経営資源から有利に立ち回ることができる市場選択を行い、規模や将来の潜在的な成長度など適切に分析して、市場の開拓に結びつけましょう。