ステルスマーケティング(ステマ)とは?要件・罰則・事例を解説

ステルスマーケティングは、従来からグレーなマーケティング手法とされていました。消費者に自然な形で商品価値を伝える可能性を秘める一方で、2023年10月の景品表示法改正により違法行為と明確化されました。これによって、ステルスマーケティングは明確な違法行為となりました。
この記事では以下のことを解説しています。
- ステルスマーケティングの要件
- ステルスマーケティングに違反した場合の罰則とは?
- 過去のステマ事案
ステルスマーケティングの定義と要件
ステルスマーケティングとは、事業者が商品やサービスの宣伝であることを隠蔽し、第三者の客観的な意見のように偽装して情報発信する行為を指します。消費者庁が定義する「一般消費者が事業者の表示であることを判別困難な状態」が成立要件となり、2023年10月施行の景品表示法改正で明確に規制対象となりました。
(不当な表示の禁止)
不当景品類及び不当表示防止法
第五条 事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号のいずれかに該当する表示をしてはならない。
三 商品又は役務の取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがある表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認めて内閣総理大臣が指定するもの
具体的には、インフルエンサーへの報酬提供を明示せずに商品レビューを依頼する行為や、自社従業員(事業者)が一般消費者を装って口コミを投稿する行為が該当します。これには、食べログやGoogleビジネスプロフィールで評価を高く見せかけるための行為も含まれ、MEO対策の一環として業者から提案されることがあります。2023年10月1日以降の日付の口コミは違法に該当します。
ステマ告示違反がもたらす経営リスク
ステルスマーケティングでは、措置命令が消費者庁等から行われ、それに従わない場合は、二年以下の懲役又は三百万円以下の罰金の行政罰が下されます。この他に、法人が主体になって行われていた場合は、最大3億円の罰金が科せられます。課徴金は、ステルスマーケティングには課せられることがありませんが、内容に優良誤認など虚偽の内容が含まれている場合、その行為を行なった期間の売上の3%が課せられます。課徴金と行政罰は併科することができます。
MEO対策の一環の口コミによるステマ認定事案
景品表示法違反が認定された場合、消費者庁から措置命令が発動され、企業名公表による評判毀損リスクが発生します。2024年6月には東京の内科クリニックが初の被処分者となり、Googleの評価操作を目的としたインフルエンザワクチン割引を提供した事案で、来院者数が処分後3ヶ月で40%減少する事例が発生しています。
また、2025年3月18日には、東京都の矯正歯科が、Googleマップに口コミを星5で記入することの代わりに、QUOカード5,000円分プレゼントまたは5,000円値引きをしていたことを理由に措置命令(公表処分)が下りました。
ステマに関連する過去の炎上事案
2023年10月1日以前にも、ステルスマーケティングに該当する事案が多数起こっています。これらは、SNSを中心に炎上し、結果として集客に大きな影響を与えています。
- 2012年の「ペニーオークション詐欺事件」:多数の芸能人がブログ上で「ペニオクで安価に商品を落札した」と虚偽の体験談を投稿していたことで炎上。一部の人気芸能人が仕事を失う事態に発展。該当芸能人には、未だにそのレッテルがつけられている。
- 2012年の「食べログ」順位操作:やらせ業者が高評価投稿と引き換えに飲食店から報酬を受け取る構造が発覚し、サイトの信頼性が長期にわたり毀損されました。
- 2019年の京都市事例:人気漫才コンビが「#京都市盛り上げ隊」のハッシュタグのみで報酬100万円のPRツイートを実施。WOMマーケティング協議会ガイドラインが求める「広告」表記を怠った結果、SNS上で2週間継続した炎上を招きました。
- 2024年の渋谷のブティック事例:従業員が複数の偽アカウントで自社商品を絶賛する投稿を繰り返したことがSNSで拡散され、1週間でフォロワー数が70%減少する事態が発生しています。
- 2019年の『アナと雪の女王2』の事例:公開直後に7人の漫画家がTwitterで同時刻に感想漫画を投稿しました。これらは一見自然な口コミに見えましたが、投稿時間やハッシュタグが揃っていることからユーザーから「ステルスマーケティングではないか」と指摘され、大きな炎上騒動となりました。
- 2024年11月の健康食品メーカー事例:Instagram投稿の報酬隠蔽が発覚し1億2千万円の課徴金が科されました。特にECサイト運営企業においては、出品者へのレビュー依頼が自社の管理責任とみなされるため、プラットフォーム運営者にも厳格な監視義務が求められています。
ステルスマーケティングを回避するためには?
ステルスマーケティングになる要件は、「事業者が商品やサービスの宣伝であることを隠蔽し、第三者の客観的な意見のように偽装して情報発信する行為」ですので、回避するためには、これらの要件に該当しないようにすることが重要です。
具体的には、見やすい位置に広告・宣伝である旨を表示します。または、なりすましではないことを表示します。
なお、広告宣伝は、事業者に金銭を渡して行なった施策または顧客に金品やクーポンを渡して得た高評価な口コミが該当しますので、これが表示できなければ、ステルスマーケティングに該当します。Googleや食べログの口コミに、「これは、PRです。」などと書き込みすることはできませんので、注意しましょう。
また、ステマの責任は、提案した企業ではなく、提案を受けいれた企業側にあります。そのため、ステマを実行するように提案されるケースもありえますので、断るようにしましょう。