飲食店の販促費はどの程度捻出すればいいのか?【適正費用計算機付き】
不景気になると、飲食店に限ったことではありませんが、まず削減の対象にするのが販売促進費(販促費)です。いわゆる広告費に関連する費用ですが、削減しすぎると、飲食店は顧客との接点(タッチポイント)を失い、来店動機を付与できなくなります。結果的に、客数が減少し、売上が下がっていき、事業規模が縮小していきます。結果的に、販促に全く着手することができなくなります。
飲食店の販促費はどの程度かけることができるのか?
飲食店の販促費は、月商の3~5%程度に抑える。
飲食店の費用の構造は、業態だけではなく、出店方式や人をどの程度使うのかで大きく異なっています。例えば、修繕費をかけないと決めた自分が管理している物件の店舗では、費用構造の10%を占める家賃(テナント料)がかかりません。また、カウンター席の割合が高い店舗では、1人もしくは家族で経営している店舗もあり、人件費が安定しやすいです。
出店方式によって、飲食店の強みは異なってくるのですが、一般的な費用構造としては以下の通りになります。
変動費 (60~70%) | 原価 | 約30% |
人件費 | 約27% | |
水道光熱費 | 約5% | |
販促費 | 約3% | |
その他(修繕費・消耗品) | 約5% | |
固定費 (15~25%) | 家賃 | 10%以下 |
減価償却、支払い利息、リース料 | 10%以下 |
この表では、販促費は3%に抑えることになっていますが、実際の集客実績から考えると、新規顧客の獲得は、良くて10%程度かかります。そのため、販促費がかからないリピーターの集客戦略を重視することで、販促費を下げることや、他の費用を削減するようなビジネスモデルに転換することで、販促費を5%程度まで費用負担可能にすることが重要視されています。
上記の表で算出した各種費用を算出できる計算機を用意しました。
以下の月商に数値を入力すると、各費用の目安が出力されます。
効果を下げずに、販促費を削減する方法とは?
販促費の額面のみを削減してしまうと、新規顧客の獲得を目的にかけていた広告を削減することになり、集客ができずに売上が下がります。
- 効果が高い施策に集中する。
- 販促費の作成コストを代替することで削減する。
- リピーターの集客戦略を改善する。
効果が高い施策に集中する。
現在行っている施策を客観的に判断し、効果の高い施策に予算を集中します。客観的に判断する指標としては以下のものが挙げられます。
集客数 | その施策で獲得できた客数。 客数の母数形成力を判断を判定するには重要。 | |
---|---|---|
CPA | 1人の獲得に特定の施策がどれだけの費用がかかったのかを評価する指標。 高いほど、効果が低いと判定できる。 | 総費用/獲得できた客数 |
CAC | 現在行っているマーケティング全体の費用対効果を評価する指標。 CPAは、見込み客の獲得に使われることもあるが、CACは新規顧客の獲得に限定される。 | 総費用/獲得できた新規顧客 |
これらを判定する時は、適切に施策が運用されていることが前提です。例えば、SNS広告を試用したのが、数千円しかかけていないのであれば、相応の表示回数しか望めないため、十分なデータを収集することができません。客観的な評価には、ネット広告では相応の投資、オフライン広告では配布部数が重要になります。
販促費の作成コストを代替することで削減する。
いわゆる外注費や生成コストの削減です。現在は、ソフトウェアが進歩しており、専門性がなくてもフライヤーのデザインが簡単にできるようになっています。これらのツールを導入することで、本来であれば外注していたクリエイティブを内製化することで、販促費を削減することができます。
リピーターの集客戦略を改善する。
飲食店では最も効果の高い販促費の削減方法です。新規顧客の集客は、リピーターの集客の5倍以上のコストがかかるとされている1:5の法則や、何もしなければ、8割の新規顧客が3回目の来店に至らない3回安定の法則があり、リピーターと関係性をどれだけ維持するかが、コスト削減には大きな影響を与えます。
例えば、以下のような条件だったとします。
- 客単価:5,000円
- 新規顧客の集客コスト:500円
- リピーターを集客するためのコスト:100円(1:5の法則から)
この場合、1回目にかかった集客は、売上に対して10%のコストですが、3回来店を促すことで、1人にかかった集客コストは4.6%までに下がっています。
また、リピーターを集客する方法には、1回目の体験(提供料理に対する満足度、接客)が依存しますが、良いお店だと知っていてもきっかけがないと来店せずに、忘却してしまうため、来店動機を付与するために、LINE公式アカウントやメール配信を行います。
LINEの普及率は、スマホユーザーの中では9割を超えているため、LINEの方が簡単ではありますが、予約システムを導入している場合、メール配信機能がついていることもあるので、都合の良い方を選択するのが良いでしょう。
まとめ
景気が悪くなったら、販促費を下げることをやってしまうのは、売上をますます収縮させてしまいます。基本的にこの考え方は、人手不足が影響しているため、事業規模を小さくする意思決定です。
そのため、販促費を削減するためには、以下の方法で無駄を削り、合理的に販促費がかからない集客方法を選択し直すことが良いでしょう。
- 効果が高い施策に集中する。
- 販促費の作成コストを代替することで削減する。
- リピーターの集客戦略を改善する。
最終更新日 : 2024年7月8日