【日本で2番目に人気のチキンのお店】ファミマの2位のマーケティングの効果とは?
ファミリーマート(以下ファミマ)は、40周年に向けたチャレンジ「40のいいこと!?」の1つ「もっと美味しく」の一環として、クリスマス限定商品「ファミマプレミアムチキン(骨付き)」を発売した。この販売促進のコピーとして「日本で2番目に人気のチキンのお店」を使っています。
従来のマーケティングのコピーとしては、1番であることを訴求することが定石でした。2番目であることを訴求することでファミマにとって良いことはあるのでしょうか?結論をいうと、かなり戦略的なコピーです。
なお、1位はチキン専門ファーストフード店ということで、ケンタッキーだと思われます。
クリスマスのチキンはどこから購入するのか?
クリスマスに食べたいものの調査を行うと、どのアンケートでも順位が一緒で、1位はケーキ、2位はローストチキン、3位はフライドチキンという結果になります。つまり、チキンというキーワードは、クリスマスでは顧客を惹きつけるワードです。
ソフトブレーン・フィールドが実施した調査によりますと、自宅でチキンを食べると回答した人のうち、購入場所としてケンタッキーを選択した人は23.3%であったことに対し、コンビニを選択した人は、わずか5.2%でした。これに対して、スーパーは、41.7%とかなり多いこともわかります。
クリスマスにおけるコンビニのチキン販売事情は劣勢であり、チキンを購入する予定のある人の目を自分たちに向ける必要性があります。コンビニ間でのチキン需要の争奪戦を行うよりも、スーパーから顧客を奪った方が明らかに伸びしろがあります。
それを考えた時に、「日本で2番目に人気のチキンのお店」は、ファミマのチキンは美味しいということを訴求し、注目を集めるためには効果的なフレーズと言えます。
ファミリーマートとケンタッキーとの比較
まず2位を訴求するメリットとしては、1位のケンタッキーと比較しても十分に競争ができると踏んでいると考えられます。ファミリーマートはコンビニであり、「その圧倒的店舗数」、クリスマス需要の「次いで買い」の2点で優位性を発揮しています。
1.店舗数の比較
店舗ビジネスでは、利便性が良いことが消費につながります。そのため、近くに店舗があるというコンビニの強みがファミリーマートの優位性になります。単純に、わざわざ遠いお店に行くよりも、近くに十分満足できる品質のお店があれば、それで済ませてしまう人もいます。
下記は、ファミリーマートとケンタッキーの店舗数と1都道府県あたりの平均店舗数を比較したものです。
店舗 | 件数 | 1都道府県あたりの平均店舗数 |
---|---|---|
ファミリーマート | 16590件 | 353.0 |
ケンタッキー | 1133件 | 24.1 |
ケンタッキー2020年3月決算情報(https://japan.kfc.co.jp/assets/articles/1608/files/159)
ファミマは、ケンタッキーと比較すると、単純計算では14.6倍の店舗数があります。
さらに、店舗数は、キャパシティの差でもあります。ケンタッキーの店舗数が少ないエリアでは注文が殺到するため、早いタイミングで予約の受付が終了になります。これに対して、ファミマは、店舗数が多いため、近くの店舗がダメでもちょっと離れた店舗で購入することができますので、取りこぼしがファミマの方が少ないことになります。
2.ついで買いができる。
購買活動において、日常生活の延長上である「ついで買い」ができることは、強みでもあります。
ドラッグストアのウェルシア薬局は、日常の買い物ができる品揃えと店内調剤薬局を併設しており、ついでで処方箋受け取り枚数を増やしていることが知られています。
商業施設にテナントとして入店しているケンタッキーでは、同施設内のケーキ屋などとシナジー効果が期待できますが、基本的に1店舗で買い物を完結できるわけではありません。
それに対して、ファミマは、クリスマスの買い物を1店舗で完結することができます。クリスマスケーキのほかにオードブルの予約も受け付けており、クリスマスの需要を1店舗で完結させることができます。
3.お一人様需要を吸い上げることができる。
ファミマは、都市部の交通量の多い駅中、駅前に出店しているケースが多いです。
クリスマスの予約をするのは、家族や恋人と過ごす目的で行うものであり、特にリモートワークの関係で1人で過ごす人が増加している現在では、予約なしでも購入できるお店は重宝されやすくなります。
日本では2位の人気のチキンのお店ということは、コンビニでは一番ですので、クリスマスの日に絞り込んだ来店促進の対策にもなっています。ついでで、スイーツなどの売上の増加も見込まれるでしょう。
ファミリーマートと他のコンビニとの比較
日本で2位の人気のチキンのお店は、コンビニ間の競争でも優位性を発揮します。
このコピーを耳にした時に、普段コンビニでチキンを購入していれば、今年のチキンはファミマで購入してみようかという気持ちになります。
前述の通り、クリスマスに食べたい料理ランキングの1位はケーキ、2位はローストチキン、3位はフライドチキンです。つまり、チキンでクリスマスの来店を確定させれば、ケーキの注文がついでに伸びることは想定できます。
そのため、1人の買い物の平均顧客単価が上がることは見込まれることもありますし、「チキンのお店」のメッセージの裏側には、「ファミマのケーキもいかがですか?」も実は含まれていると思われます。
まとめ
ファミマが2位でも良い理由は、チキンの市場自体に大きな伸びしろがあり、クリスマスの時のかなり強い来店動機にもつながっているからだと推測されます。
2位を訴求することで、1位のケンタッキーに比べると消費者に近く、利便性も良いため、来店を促進することが可能です。店舗数の多さからキャパシティもあり、とても攻めたコピーである印象です。また、クリスマスの来店動機を作ることで、クリスマスケーキの売上アップも見込んでいるのではないかと思われます。
■マーケティング用語
ブランド想起
「チキンといったらケンタッキー」のような特定の商品やカテゴリー名を出した時に、ブランド名を想起することです。ブランド想起が起これば、認知度が定着化している指標にもなり、その商品の販売に至ってはトップシェアを狙うことができます。
最終更新日 : 2021年12月15日