STP分析とは?マーケティング戦略の立案に必要な外部要因の分析方法
マーケティングの戦略立案には、様々な分析を用います。商品やサービスを開発しようと思った時に、市場に労力をかけずに浸透する魅力的なものを作ろうと考えます。その時に、適切な標的市場を選定する時に使うのが、STP分析です。
STP分析とは?
STP分析とは、自社の努力では改善することができない外部要因を分析し、商品やサービスの開発に役立てるための分析方法の一つです。STP分析を行うことで、標的市場の顧客ニーズに絞り込んだ顧客価値を持った商品やサービスの開発を行うことができます。
STP分析の3つの要素とは?
STP分析は、3つの要素から形成されており、セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングの順番に実行します。これらの要素について解説を行います。
セグメンテーション(Segmentation)
例えば、店舗では、商圏がそのまま市場に設定されることが多いですが、そこに住む全員に好かれる店舗作りはまず不可能です。そのため、年齢、趣向、ライフスタイルなどの様々な要素で細分化していきます。市場細分化のことをセグメンテーションと呼びます。
なお細分化に使う4つの要素には以下のものがあります。
変数 | 概要 | 具体例 |
---|---|---|
人口統計的変数 | 人口統計に関係する特性を指すデータ。 | 年齢 性別 収入 教育レベル 職業 |
地理的統計変数 | 地理的な位置や地域に関連する特性を指すデータ。 | 場所 気候 人口密度 地形 交通の利便性 経済的特性 |
心理的変数 | 顧客の内面的な動機や欲求に関連する特性を指すデータ。 | ライフスタイル 価値観 性格 興味・関心事 |
行動的変数 | 個人や集団の具体的な行動や行動パターンを指すデータ。 購買行動に直接影響を与える。 | 購買行動 ブランドへの忠誠度 使用頻度 利用するメディアの種類 |
ターゲット(Targeting)
ターゲティングとは、細分化された市場から十分な市場規模があり、自社の強みを十分に生かすことができる標的市場を選択することです。
標的市場を考える時は、商品やサービスが持つ顧客価値がセグメントが求める価値に一致していたり、セグメントの規模が事業を成功させるくらい十分であることを重点とします。
単一セグメント集中
1つのセグメントに集中します。これによって、全ての資源を集中できますので、特化した顧客価値の追求と充実したサービスを提供することができます。ただし、セグメントに大きな変化があると全滅の可能性があります。
選択的専門化
経営資源に余裕がある場合、魅力的な複数のセグメントを標的市場に設定します。それぞれのセグメントに相関性はなくても、収益になるのであれば良い戦略です。リスクを分散することができるメリットがあります。
製品専門化
投入する商品やサービスの魅力が強い時は、関連するセグメントを選択します。ただし、イノベーションが発生した時には、選択したセグメント全てでシェアが逆転する可能性があるリスクがあります。
市場専門化
圧倒的に強い販売網を持っている時は、その市場に合わせた商品やサービスの開発を行い、流通させます。ただし、販売網を奪われたり、販売先が倒産し、市場が縮小すると、一気に全滅するリスクがあります。
フルカバレッジ
全てのセグメントに商品やサービスを投下しますが、莫大なコストがかかるため、元々全てに販売網を保有している大企業以外では現実的ではない戦略です。シェア1位の企業のみが選択できる強者の戦略です。
ポジショニング(Positioning)
顧客が他社製品と比較した時に、自社の商品やサービスがどうみられるべきなのかを設定し、差別化します。これが、ポジショニングです。ポジショニングには、KBF(購買決定要因)を基準にして行います。
ポジショニングには、ポジショニングマップを活用します。KBFの中で相関性の低い2つを選択します。その2つを縦軸と横軸に設定し、競合製品のポジションをプロットします。この時に、競合が手付かずの部分向けの自社製品を開発した時に、競争を回避したマーケティングが行えます。
例えば、女性向けのスマートフォンを新たに開発したいと思った時に、重さとデザイン性がKBFとして考えられます。この時に、小型でデザイン性の良いスマートフォンを開発し、市場に投下する意思決定を行うことができます。
STP分析を実施する時の注意点とは?
セグメンテーションは、市場調査を実施して行う。
セグメンテーションを行う時には、データが必要になります。市場規模を判断するために必要な情報、人口や年齢などの統計の他に、サイコグラフィックス(心理的変数)などのアンケートでライフスタイルの調査も必要です。
特に、アンケートの調査方法としては、重要なのは、偏りがないことが原則です。そのため、ランダムでアンケートの対象を決定する必要がありますし、サンプルも増やす必要性があります。
ペルソナで標的市場をあらかじめ具体化する。
標的市場を決定する時に、具体的な顧客像を設定しておきます。これによって、関係性の高いセグメントを選択することができるようになります。具体的な顧客像を設定する方法をペルソナと呼びます。
ペルソナの設定には、氏名、年齢、家族構成、ライフスタイル、仕事、ポジション、世帯収入、価値観などの特定の個人を想起させるくらい細かな項目を用意し、記述していきます。この時の注意点としては、市場規模が十分なセグメントの代表的な実在する人物像を作り上げることです。
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ポジショニングは、自社の強みと相性の良いものを選択する。
ポジショニングでは、競合しないポジションを狙うことが前提ですが、実現性のないポジションは選択することができません。例えば、前述のスマートフォンを小型化することが望ましくても、自社にその技術がない時には、多額の開発費用を投下する必要になり、売上目標を無駄に上げてしまう結果になります。
そのため、自社の強みをSWOT分析などで分析し、明文化しておくことも重要となります。
STP分析と関係性の深いマーケティングの分析手法とは?
4P分析・4C分析
STP分析が外部要因を分析する手法であれば、4P分析、4C分析は、市場に向けた商品やサービスの開発を行う時に用いられる分析です。これらは、マーケティングミックスの代表的なフレームワークでもあります。
4P分析とは、企業側の視点で考えられているフレームワークです。商品開発、価格、流通、販売促進の4つに分類されます。これに対して、顧客側の視点で考えられているフレームワークが、4C分析で、顧客価値、コスト、利便性、コミュニケーションの4つに分類されます。
STP分析を実施した後に、4P分析・4C分析を行うと、ニーズの読み違えによるマーケティングの失敗を防ぐことができます。
3C分析
3C分析とは、自社、顧客・市場、競合他社の3つの視点で、自社商品やサービスが市場で置かれている環境を分析することができます。
まとめ
STP分析を行うことで、外部要因を分析することができます。すべての市場を対象にしたビジネスは不可能です。魅力的な標的市場を厳選しなければ、経営資源は有限であるため、顧客ニーズを満たした商品やサービスの提供が難しくなります。
STP分析をはじめとした分析方法を使い、自社の強みを有益に活用するマーケティング戦略を立案しましょう。
最終更新日 : 2024年4月20日