【2025年度版】美容室の集客を成功させる方法・戦略
美容室の集客は、他のビジネスと比べて一筋縄ではいかない難しさがあります。その主な理由は、美容室の数が非常に多く、その反面、飲食店や小売店に比べると、利用する機会が少ないからです。
美容室の店舗数は年々増加傾向にあり、令和3年度には26万4223件に達しています。コンビニエンスストアが令和5年度には5万7594件、美容室と並んで事業所数が多いとされている歯科医院では平成28年度に17万8911件であるため、その数の多さがわかります。
また、一度気に入った美容師を見つけると、引越し又は担当の美容師が独立でもしない限り、店舗を変更することがないとされています。
これらから、美容室は、新規顧客の集客の難しさがわかります。ただし、美容室は勢いよく店舗数を増やしているブランドも存在するため、集客ができないというわけではありません。
そこで、この記事では、美容室に集客をするポイントを解説していきます。
美容室の集客のポイントとは?
美容室の集客で重要なことは、継続して利用する顧客を増やすことです。新規顧客をせっかく増やしても、すぐに顧客が離れてしまう美容室の場合、ほかの競合店舗で顧客が定着する可能性があり、戻ってくる可能性がとても低いからです。
また、継続して利用してもらうためには、関係性の向上と予約のしやすさがとても重要です。あまり思い入れのない美容室は少しの不満で離れてしまいますし、予約が取りづらい美容室も同様に諦めてしまいがちになります。
そのため、美容室の集客では以下のポイントに分けて考える必要性があります。
- 新規顧客の獲得
- 関係性の向上
- 予約をしやすくする
新規顧客の獲得
美容室の新規顧客の獲得は、飲食店などに比べると難しいですが、当然できないわけではありません。今現在の美容室に不満を感じている場合があるからです。
行きつけ美容室から他店へ変えたことがあるかどうかを尋ねたところ、「ある」という回答が71.2%を占めた。一方「ない」と回答した割合は、28.8%存在した。
美容室の利用に関するアンケート調査(2009年調査)
約7割の人が行きつけの美容室を変えた経験があると回答しています。ホットペッパービューティーが20万人以上の都市に住む女性を対象に調査したところ、美容室を変えたいと感じた理由は、技術が低いことが41.3ポイント、仕上がりがイメージと違うことが38.3ポイント、スタッフの対応が悪いことが28.0ポイントとなっています。
厚生労働省の「今日から実践!収益力の向上に向けた取組みのヒント」では、利用している美容室に通うことをやめた理由の調査結果を公表しています。この結果を見てみると、引越しや生活の変化でいけなくなったことや美容室の退職などコントロールが効かない原因のほかに、担当者の技量、美容室の客層、待ち時間の長さ、施術時間の長さ、担当者の接客態度などコントロールが効く原因も多いです。
利用している美容室に通うことをやめた理由は、そのまま次の美容室を選ぶ理由になります。つまり、これらの不満を感じている人に以前の美容室と異なる体制や魅力を訴求することで、美容室に新規顧客を集客することができます。
関係性の向上
思い入れのない美容室は、少しの不満で顧客は離れてしまいます。
技術も重要ですが、居心地の良さ、空間、接客は工夫をする必要があります。また、顧客が90日以上離れると、新規顧客の70%、既存顧客の30%が失客すると言われています。なんとなく髪を切りにいかない期間があくと、顧客離れを起こすために、忘れられない目的と次の来店を気軽に予約ができるように、いつでもコミュニケーションが取れるようにします。
利便性の向上
美容室で問題になりがちなのが、予約がしづらいことです。例えば、広告などで知り、気になった美容室があります。この美容室の予約が電話予約もしくは操作が難しい予約システムであるために、予約を断念してしまうことはよくある話です。
これは、新規顧客だけでなく、リピーターでも同様で、予約がなかなか取れないことで予約が取りやすい美容室の予約を入れてしまうこともよくある話です。
予約が取りづらいことは、「集客にて広告費の無駄」や「リピーターの顧客離れ」を生む原因になります。これを解消するには、24時間いつでも予約が取れる操作が簡単な予約システムを導入し、予約が即座に確定する環境を用意することが重要になります。
美容室の集客の戦略
美容室の集客では、上記のような集客戦略を立てます。
消費者行動
消費者行動とは、顧客が購入に至るまでの行動を意味しています。これを体系化したものを消費者行動モデルと呼びます。美容室の場合は、美容室を知ってから評判や詳細を検索してから予約を取りますので、AISAS(認知→興味→検索→購入→共有)になります。ただし、美容室は、顧客を定着化する施策がかなり重要ですので、接点作りを購入と共有のプロセスの間に挟みます。
抽象的なので、わかりやすく具体化します。
美容室では、具体的に、「美容室の存在を知って、評判が気になり、口コミサイトを確認して、良さそうと感じたら、試しに初回来店をしてみる」のような流れになることが多いです。
これを分解すると、
- 美容室の存在を知る
- 口コミサイトを確認する
- 初回来店は顧客側からみてもトライアル
という流れになり、その結果が、次回の来店に向けた会員登録(LINE登録)や口コミの拡散に繋がります。
具体的にこの流れを作ることをイメージすることが重要です。
インサイト
この段階で顧客が感じていることを具体的な言語で出力します。
- 良い感情が生じるようにするにはどのようにすれば良いのかを考える。
- 逆に、悪い感情が生じないようにするための対策も考える。
これらの対策ができていれば、集客の流れは最後までスムーズになり、集客が増えます。
具体的な対策
集客の施策を選定します。この時に、得られる効果、コスト、施策を実行できるだけのキャパシティの有無などから総合的に判断し、優先順位をつけて実行します。
美容室の集客に活用する広告や対策
美容室は、店舗ビジネスですので、商圏内の認知拡大をすることが重要です。
ホットペッパービューティー総研の美容コンセンサスによると、女性の62%、男性の60.5%は自宅近くの立地から美容室を選びます。通勤通学の付近は、女性16%、男性20.4%が選択しています。(2021年度)
これらから、美容室が広告を出稿する時は、住宅街であれば、単純に店舗に来店が可能な距離の範囲で広告を出稿し、ビジネス街や繁華街であれば、流入範囲を分析して広告をかける必要性があります。ビジネス街や繁華街が広告を出稿する範囲は、競合に対して母数が少ないため、近隣だけでは足りません。
美容室が新規顧客を集客するために使う、代表的な広告や集客の施策は以下の通りです。
- ポスティング広告
- 美容サロン検索(ホットペッパービューティー、楽天ビューティーなど)
- 公式HP
- MEO対策(口コミ対策)
- SNS広告・SNSの運用
ポスティング広告
ポスティング広告とは、チラシの投函を外注する代表的な集客の施策です。近隣に絞り込んでチラシを投函してもらうことができるため、特定の地域内では、ウェブマーケティングではリーチしない人々にもチラシがリーチします。
店舗ビジネスでは、開業時やキャンペーン時に存在を認識してもらうための代表的な施策であり、これにより、美容室が新たに開業したことなどの情報を近隣に伝えます。
高価格帯のサービスを提供する場合、ターゲットとなる顧客に向けたチラシを作成することが重要です。あなたの美容室の雰囲気、他の美容室との技術的な違い、受賞歴、コンセプトなどを掲載し、イメージにマッチした画像を選択してチラシを作成しましょう。
美容サロン検索
美容サロン検索では、新規顧客の集客から予約獲得までができるサービスです。代表的なサービスには、ホットペッパービューティーや楽天ビューティーがあります。これらのサービスは、強力な集客力を誇り、サイト内の検索で上位に表示されることで、新規の顧客を集客ができます。
ただし、サイト内検索の上位に表示するためには、優先的に表示されるプランに加入する必要があったり、広告費がアフィリエイト型(予約の入ったメニューの料金の%)であったりします。また、競合が多い立地だと、高額なプランでも上位に表示できないことがあります。
ほったらかしで集客ができることが美容サロン検索の最大のメリットですが、割に合わないと感じている美容室も多いようです。その場合は、ほかのマーケティング手法を行い、予約システムで予約を受けます。
公式HP
美容室では、公式HPが必要です。飲食店の場合は、さまざまなグルメサイトやキュレーションサイトが上位を占めているのですが、相対的に美容室の方は少ないこともあり、公式HPを持っていれば露出することがあります。
また、公式HPは、集客が目的の美容サロン検索には掲載できないスタッフ募集などの情報も掲載することができます。下記の情報は、必ず公式HPに掲載します。また、WordPressで公式HPを作成する場合は、プラグインでInstagramの画像を表示させたり、サービスの詳細を説明するブログ記事を書くことが、集客に有効です。
- 美容室のコンセプト
- 店内(特に清潔さ、空間の広さ)
- 美容室の強み
- スタッフ
- メニュー
- 基本情報(営業日時)
- アクセス方法
- 予約システム
MEO対策(口コミ対策)
MEO対策とは、Googleマップなどの地図検索で視認性を向上させる施策のことです。例えば、Googleマップで「地域名 美容室」と検索すると、上位に表示される対策が含まれます。
地図検索の特徴としては、予約サイトやキュレーションサイトのコンテンツが検索結果に引っかからない点が挙げられます。そのため、しっかり対策をすれば上位表示すること自体は難しくはありません。ただし、検索順位は、現在地からの距離が近い美容室が上位に表示されるようになっています。つまり、立地周辺の人口や人流に集客の効果は大きく影響されます。
MEO対策には、口コミ対策の面もあります。Googleマップは口コミサイトの機能も担っています。
美容室を知ったら、口コミを確認します。その時に、Googleマップで検索して口コミを確認するのが手取り早いこともあり、日常的にGoogleマップに口コミを依頼するような習慣をつけておきましょう。
SNS広告
美容室の存在を知るのは、InstagramなどのSNSが多いとされています。
ミュゼマーケティングが1094人のF1層(20歳〜34歳女性)を対象にした調査を実施しました。美容室の情報を入手する方法では、InstagramなどのSNSが35%、ヘア関連のアプリが18%、MERYなどのまとめサイトが16%とのことです。
美容室の集客方法は、ホットペッパービューティーに依存度が高く、サイト内検索で上位に露出しなければ新規顧客の獲得が困難な状況でした。しかし、最近では、顧客が美容室を探す手段としては、InstagramなどのSNSが使われていることがわかります。
そこで、SNS広告を運用します。
SNS広告は、SNSに自然な形で投稿型の広告を紛れ込ませることができます。この広告を使うことで、画像や動画で訴求することはできますし、広告は、年齢、性別、地域、興味関心で絞り込むことができます。そのため、市町村単位やエリアを指定して広告を表示する範囲を指定できるため、美容室の新規顧客の獲得に使う広告には向いています。
美容室の集客に使うSNSでは、画像や動画で訴求することがしやすいInstagramやTiktokを活用することがおすすめです。どちらも無料でアカウントを運用することができますが、近隣の人々に知られることが最も重要なので、広告と併せて使いましょう。
Instagramは、LINEやYoutubeを除くと、日本で最も使われているSNSです。画像や動画を中心としたコミュニケーションが行われ、Z世代などでは、Instagramで評判を検索する「タグる」などの習慣があります。
美容室についての情報がなければ、ユーザーはフォローしません。そのため、まずは美容室の魅力を伝える投稿から始めましょう。例えば、「ショートボブの可愛いカット例」をテーマに、ビフォーアフターの画像を投稿すると良いでしょう。投稿には店舗情報や特徴を紹介し、「#ショートボブ」のようなハッシュタグを使用して検索性を向上させます。
Instagramでは、Facebook広告を利用して詳細なターゲティング設定が可能です。地域を指定してコアオーディエンスを設定し、広告を配信します。広告に対する「いいね」やコメントなどのエンゲージメントは、ユーザーが関心を持っている可能性が高いため、積極的にフォローを行い、相互フォローを促すことが効果的です。
以上のステップを踏むことで、Instagramを活用した集客が可能になります。美容室オーナーの皆さんも、ぜひInstagramを集客ツールとして活用してみてください。
TikTok
TikTokは、世界で最もユーザー数を伸ばしているSNSです。
日本国内のSNSのシェアも伸ばしてきており、特に若年者層を狙う必要性のある美容室とは相性の良いSNSです。動画で訴求することができるため、ビフォーアフターをわかりやすく編集してアップすれば、美容師としての技術力をアピールすることができます。
実際「美容師」で検索すると、視聴者数の多いショート動画が表示されます。美容師単位でアカウントが運用されていることが多く、どのような技術を持ち、印象もTikTokではわかりやすいです。
リピーターを美容室に集客する方法
美容室の集客の基幹になるのは、顧客離れを起こさない仕組みを作ることです。
そのため、リピーターには、来店動機になるような情報をリアルタイムに届けることができたり、問い合わせが簡単にできる仕組み、予約を簡単にすばやく取れる仕組みなどを提供して、次の予約が簡単に発生する仕組みを意識的に構築する必要があります。
ここで、重要になる仕組みは以下の通りです。
- LINE公式アカウント・LINEミニアプリ
- POSレジ
- 予約システム
- 異業種とのコラボ
LINE公式アカウント・LINEミニアプリ
LINE公式アカウントは、店舗版のLINEアカウントのことです。無料から使うことができますが、一般的には、5,000円(税別)〜の有料プランを活用します。
LINE公式アカウントを使うと、開封率の高いLINEでメッセージを送信することができます。その他にも、クーポン、チャット、ステップメールなどの機能があり、リッチメニューに予約や公式HPへのリンクを設置することもできます。
LINE公式アカウントは、LINEユーザーに対して、新規のアプリのダウンロードを要求しませんし、おともだち登録するだけでメッセージを送信できるようになります。そのため、店舗アプリやメールマガジンよりも運用が簡単です。
導入する際の問題点としては、おともだち登録を効率的に増やす方法であり、現在ではLINEミニアプリを導入するのが一般的です。LINEミニアプリは、LINEアプリで、店舗の順番待ち、会員証、モバイルオーダーなどの簡易的な機能を実装する仕組みです。LINEミニアプリを登録した際には、LINE公式アカウントの登録を促すこともできます。
美容室のLINE登録を促す戦略としては、LINEミニアプリを会員証として運用し、顧客全員に登録を促します。その際に、LINE公式アカウントの登録者数を増やしていきます。
POSレジ
LINEミニアプリを導入しても、POSレジと連携ができなければ、顧客情報に紐づきません。そのため、LINE公式アカウントを使った積極的なマーケティングを行う際には、連携ができるPOSレジを導入しなければなりません。
美容室のPOSレジは、大手の汎用的なPOSレジの他に、美容室専門のPOSレジがあります。これらの違いは、前者の方が多種多様なカスタマイズが可能ですが、後者の方は、美容室に必要な機能のみに絞り込んでカスタマイズが可能です。
LINEミニアプリとの連携は、どちらも可能ですが、Airレジなどでは連携することができないので、注意が必要です。
予約システム
予約システムとは、直接オンラインで予約を取ることができる他、ホットペッパービューティーや楽天ビューティーなどの予約を取りまとめる予約台帳の仕組みを含むシステムを指します。
予約の際の利便性を向上させるためには、ただ予約を受け付けるだけでは不十分で、ダブルブッキングがないように予約システム上で管理し、予約の段階で予約を確定させることが重要です。
予約システムは、POSレジの基本機能に含まれている場合があります。まずは、既存のPOSレジを確認してください。
異業種とのコラボ
美容室の集客で困ってしまいがちなのは、来店動機を提供しづらいことです。飲食店では、旬な限定メニューや催事出店のお知らせをすることができますが、美容室のビジネスモデルはそこまで柔軟に対応することができないからです。
そのため、他店舗や関連性の高いビジネスパートナーの力を借ります。
たとえば、美容室がカフェと隣接している場合、お互いの顧客を共有することで、新たな集客の機会を生み出すことができます。美容室からは、ヘアカット後に利用できるカフェのサービス券を提供することで、顧客はカフェに立ち寄るきっかけを得ます。逆に、カフェからは、美容室で利用できる無料の眉カットサービス券を提供することで、カフェの顧客が美容室に訪れるきっかけを得ます。
また、山形県鶴岡市のある美容室では、レディースデーを設け、その日は男性客を断り、他の業種の店舗にスペースを提供しています。これにより、美容室の顧客だけでなく、提供先の店舗の顧客も美容室に訪れる機会を得ることができます。
これらの方法を活用することで、美容室のオーナーは集客の効率を高め、ビジネスの成功につなげることができます。
まとめ
2025年度の美容室の集客は、いかに環境に適応したマーケティングができるのかが重要です。
美容室の集客方法としては、ホットペッパービューティーは現在も強いですが、美容室を探す方法は、GoogleマップやInstagramなどのSNSなどにも分散しています。これらの実態を理解して、うまくマーケティングに適合させることで、集客の成功率を向上させることができます。
特に、美容室の場合は、以下の施策を重要視しましょう。
- LINE公式アカウントの登録率を100%を目指す
- LINE公式アカウントで予約がすぐ取れるようにするなど機能を充実化させる
- 良い口コミを毎年着実に増やす(目標は店舗によって異なるが可能であれば、毎年100件増やす)
上記の施策は、積極的な集客方法ではないですが、集客のコントロールが効くようにする対策です。いわゆる集客力を向上させる対策で、予約満員時の広告経由の客数の割合を減らし、利益率の高い体質に改善することができるようになります。